美しい距離
美しい距離 / 感想・レビュー
風眠
40代、末期癌、助かる見込みの無い妻。妻にしてあげたい事、妻の気持ちを尊重し見守る事。その狭間で、どう寄り添えばいいのか揺れ動く夫の心情は淡々としているようにも見えて。劇的な展開があるわけではない。けれど、そういうものかもしれない。それがリアルなのかもしれない。他人が見れば悲劇の夫婦。だけど実際のところ、妻がどう感じているか、夫がどう感じているかは、当人にしか分からない事なのだ。優しさや哀しみを押し付けないことは、遠慮ではなく『美しい距離』。しかし、その美しさを全うする事は、決して生易しい事ではないのだ。
2016/08/11
ミカママ
美しいタイトルや装丁さながらの、静かな物語でした。人と人との関係は、すべてが光っている。遠くても、関係さえあればいい。
2016/11/24
文庫フリーク@灯れ松明の火
昨年9月に亡くなったオヤジが迎えた春の彼岸。オヤジ同級生3名の方が墓前に生花と線香を手向けて下さった。オフクロが駐車した車に気づかなければ、そのまま拙宅にも寄らず帰られたはず。どうかご健勝で、と祈らずにはいられない。末期癌で入院した妻との日々を綴る夫、淡々とした描写の中に時折見せる苛立ち。介護休業申請し、短時間勤務で妻の側で過ごす時間が多くなるほど、親族・医療関係者・妻の仕事仲間などに対し、些細な気持ちのすれ違い・距離感の違いが苛立ちを招く。私の場合はオヤジであったが、抗がん剤治療中止となり、モルヒネ→続
2017/03/22
zero1
多くの人は病院で生まれ、病院で死ぬ。人生の終わりをどう迎えるのか?夫婦15年で妻が末期がん。保険会社勤務の夫は介護制度を利用して妻との時間を大切にする。もし自分が余命宣告されたら家族にどうしてほしいか?逆に家族が余命短い状態ならどうする?見舞いに来た夫を「来たか」と手を振る妻。女性作家らしく、登場する男はサラサラしている。がん死を描いた作品としては、「東京タワー」(リリーフランキー)や「その日のまえに」(重松清)を思い出す。描き方の違いを比較すると、作家の特徴がよく見える。芥川賞候補だがまたしても落選。
2018/11/16
いつでも母さん
読友さんお薦めも頷ける。165頁の薄さなのにギューと夫の想いが濃いので読了に時間がかかる。一文字ずつがドクンドクンと私の胸に響くのだ。人は産まれた時から『死』に向かって生きている。必ず逝くのだ。この夫の様に周りに気を遣って、相手(妻だけでなく)を慮っているのは苦しいよぉ。私も、自分と他者との距離って難しいと、齢と共に感じるようになってきた。病を得た妻を看取り一年後まで、微妙な距離感を優しく巧く綴って・・なんと素敵なタイトルを付けたものだ。
2016/11/21
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