江戸おんな絵姿十二景
江戸おんな絵姿十二景 / 感想・レビュー
じいじ
【海坂藩城下町 第3回読書の集い「冬」参加】没後20年記念本。藤沢は言う「浮世絵には無限の想像力をかきたてる世界が隠されている…」と。今作は、12枚の浮世絵を選んで小説をつけたもの。一つひとつは掌篇ながらも起承転結を整えた、氏の持ち味が発揮された奥深い味わいの12話です。主人公は、吉原の売っ子花魁から江戸市井の妻や娘、浮世絵をモチーフにした女たち。女の手練手管に翻弄される男どもには笑いました。藤沢氏が女の芯の強さ、いじらしさ、可愛さを、お色気も交えて見事に描き上げた傑作です。
2018/01/11
なお
鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、月岡芳年、歌川国貞、歌川豊国…。江戸の女性の姿を情緒豊かに、また粋に描く浮世絵師達。彼等の作品と藤沢周平の小説を組み合わせた十二の掌編集。商家の娘や職人の女房、花魁達…。この時代に生きた女性一人一人の男女の物語は、いつの世も変わらぬ甘さと後悔と後ろめたさに彩られていた。口絵に鳥文斎栄之の浮世絵が描かれた『明烏』。吉原の花魁播磨に語る、身上を潰してしまった雪駄屋の新兵衛の言葉。「不相応な男の夢がかなった幸せ者だ。何で花魁を恨む事があるものか。」江戸の粋を垣間見た気がした。
2024/06/15
きさらぎ
藤沢周平没後20周年を記念して出版された掌篇。12枚の浮世絵に触発されて書かれた1月から12月までの季節に対応した、若干の遊びごころを含んだ江戸情緒豊かな話ばかりだ。話の内容ばかりではない。『おぼろ月』の中で、春の日暮れは急に暗くなるのではないということを「そこまで来ている夜と、しばらくはじゃれ合いながら、ためらいがちに姿を消して行く」という表現をしている。昼と夜が共存できる時間はほんの少しで、その別れを惜しむようにゆっくりと夜が来る。なんて素敵な表現なのだろう。
2017/07/03
baba
すでに読んだことがある短編集(「日暮れ竹河岸」)でしたが、触発されて書かれたと言う浮世絵が一緒に掲載されていて、たっぷりと情緒を堪能しました。
2017/02/05
matsu04
春信や歌麿などの浮世絵(美人画)から藤沢が想像をめぐらせ紡ぎ出した12の掌篇。ちょっと崩れたような、あるいは薄幸な市井の女たちが描かれる。各篇冒頭の浮世絵と見比べながら読むととても面白い。図書館で本書を見つけ、こんなのがあったとは!と喜び勇んで借りたのだが、「日暮れ竹河岸」(文庫本には浮世絵は無いが)の前半部分なのだった。
2024/11/08
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