明るく死ぬための哲学
明るく死ぬための哲学 / 感想・レビュー
桜もち
「過去に戻りたい」というけれど、過去なんてものは無い。振り返って過去だと意味付けすることでいわば過去が生まれるみたい。哲学者は、多くの人が真剣に考えない・考えたくないことを考え続ける。逆に、世の中の人が日々議論している幸福については考えない。少なくとも中島さんにとって幸福は真実に背くから。世の中の人は『真実という名の幸福』を追求しているだけであって、幸福になれる要素はひどく不平等。真実=誠実だけれども、真実は往往にして過酷だ。哲学者は隠れキリシタン、というたとえがとてもしっくりきた。もっと話を聞きたい。
2020/12/02
テツ
「自分はいつか必ず死ぬ」「何故自分は生まれて来たのか」こうした疑問は幼少期に誰しもが抱くものだと思うが(だよね?)その問いがいつまでもいつまでも頭に響いている人間というのは実は少数派なんだなということに中島先生の哲学塾に参加して気づいた。生きることやそれに纏わる様々なことを単純に捉えることが出来たらどんなに楽だろう。でもそれが出来ない割り切れない人間はひたすら考え続けるしかない。思考を積み重ねていくしかない。そうして生きてきた先人がいるということに安心する。
2017/07/07
さえきかずひこ
70歳を迎えた著者による哲学エッセイだが、第1章とその他3章の難しさが違い不恰好な構成となっている。基本的にはいずれ必ず死んでしまうわたしの死とは何かという問いに立脚し、中島の認識論・時間論・存在論が自由に展開される。著者がカントの専門家であったことはよく知られているが、本書ではカント以外にはその哲学塾で教えているニーチェやハイデガー、とくに後者の引用と言及が目立つ。「死とは何なのか」と問う人には興味を引く内容だが、じっくり腰を据えて読まなければ込み入っているので何が書かれているのかよく分からないだろう。
2019/05/08
ザカマン
哲学書は文章も理解も難解だ。物体や事柄に意味は無く、人間の言葉で意味を付着しているにすぎないことは理解した。
2019/02/28
マカロニ マカロン
個人の感想です:B+。中島先生の「人は望みもしないのに生まれさせられて、すぐに死んでしまう」という意味の主張に共感したことがあったのだが、本書では「未来は存在しない」という考え方をとても興味深く読んだ。「眼前の現象は過去へ移行するのではなく、消えるのだ」「未来があると考えるから人の死は悲しいのだ、未来がなければ生も死も同じ」と考えると、本中で批判しているキュビズムも、死を扱った本(ほとんどの本に死はつきもの)は価値がなくなってしまう。「寝転がって読めるもののうちに真理はない」という哲学のこじらせ方が新鮮。
2020/04/05
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