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作家
皆川博子
出版社
文藝春秋
発売日
2017-11-28
ISBN
9784163907598
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U / 感想・レビュー

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starbro

皆川博子は、新作中心に読んでいる作家です。87歳の著者が、これだけスケールが大きくボリュームのある作品を産み出すことが驚きです。U-ボート救出作戦とオスマン帝国の衰退を見事にクロスオーバーさせています。まだまだ新たな作品が期待出来そうです。

2017/12/30

藤月はな(灯れ松明の火)

最後まで読むと「帯を書いた人はこの作品を本当は読んでいないのではないのか?」という疑問にふと、駆られてしまう。年少だったミハイとレミリアが命を紡いだ中、命と時の海に浸かり、不老不死者に近しいモノになった二人が悔いと屈辱に塗れ、混濁していく過去に縋り、何度も死にはぐった事、ドイツの事を伝える終章を想うと苦しくて仕方ない。私が特に心動いたのはヤーノシュによる語りだ。野心や範疇外の他者への関心はなく、鬱屈した自我を弄ぶだけ。しかし、その怠惰によって起きてしまった事に後に呆然とする姿に今の自分を重ねざるを得ない。

2018/03/18

まこみん

第一次世界対戦時、ドイツの潜水艇Uボートが敵国イギリスに乗組員と共に捕獲された。物語は17世紀初めのオスマン帝国に遡り、強制徴募で周辺国から集められた3少年の数奇な運命を辿っていく。初めはシュテファン目線で綴られていた話が、次第にヤーノシュの語りと思いが語られていく。皇帝の一存で処遇が分かれ、ヤーノシュは厚待遇にも関わらず、肉体的屈辱に苛まれ続け、シュテファンを片時も忘れないのに妬んでは自らを責める。シュテファンの方も同じ気持ちだったのでは。後半はポーの一族的に時代を巡り、虚無感と感動が込み上がる読後感。

2020/05/07

mii22.

帯に書いてある「美しき少年兵」も、恩田陸さんのおっしゃる「ただただ圧倒された」も私には感じることが出来ないほど、主人公の少年の、測り知れない大きな心の空洞に呑み込まれ支配された読書だった。別の意味では、感覚のない巨大な空洞に圧倒されたと言える。1613年オスマン帝国の滅び行く姿、時を経て1915年ドイツ帝国Uボートに続く物語は幾多の栄枯衰退を繰り返し、国や人の生死を重ねていく。数奇な運命に翻弄される彼らの物語は素晴らしかったが、それ以上に心の空洞に支配され寂寥感で心締め付けられる思いだった。

2018/01/07

miyu

心の中でずっと「すごい!すごい!」と繰り返していた。オスマン帝国、U19、私の今の興味からはほど遠い世界のはずなのに。そもそも共通するようにも見えないこの二つの歴史がどう結びつくの?と半信半疑で本を開いたが、やはりいつもと変わらず皆川先生は少しも迷いを感じさせぬほど優雅で力強かった。このテーマならもっとセンチメンタルに書けるだろう。実際に情に訴えてお涙頂戴的なまがいものを作りあげる作家もいる。だが先生はそんなちっぽけなことはしないのだ。まさにクールの極み。それゆえに逆に彼らの数奇な運命と悲嘆が身にしみた。

2018/02/20

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