修羅の都
修羅の都 / 感想・レビュー
yoshida
平家討伐から奥州藤原氏攻め、鎌倉幕府の成立、承久の乱まで。源頼朝の光と影を通じて、武家と公家の争いを描く。前半はイメージ通りの怜悧な頼朝が描かれる。冷徹に弟の義経や範頼を討つ。甲斐源氏の力を削ぎ、清和源氏による東国支配を確立する。後半では老耄する頼朝を描く。揺らぐ武家による東国支配。落馬による頼朝の死に纏わる説。北条執権体制の萌芽と承久の乱を契機とする武家と公家の支配層の交代が読める。頼朝と北条義時は成した事は、日本史でのひとつの革命であろう。朝廷の権威の下で、公家に代わり武家が支配する。画期的な事件。
2019/06/15
ちょろこ
読み応えがあった一冊。武士の府を守り抜く、その志を共にした頼朝と政子。決して順風満帆ではない二人三脚。この作品はまるで鎌倉に吹き荒れる嵐を見たようだった。理不尽な斬首、首実検、致し方ない時代を改めて思う。そして義時がミステリアス過ぎて怖さも。頼朝の側でこまめに動くその裏側を想像してしまう。そして終盤は病を患ってからの頼朝の周りに流れる不穏な空気、虎視眈々と権力闘争を伺う輩、花押争奪戦と…一つも見逃したくないほど読み応えあり。そしてやっぱり思う。政子は武士の府だけでなく家族、親子の府も創りたかったはず、と。
2022/04/15
とん大西
正に修羅。もののふどもの政地にして聖地-鎌倉府の永遠を願い、戦い続けた初代将軍源頼朝と妻政子。手と手を携え互いを助け合い-そんな穏やかさが絵空事と思えるほどの試練、非情、無情。平家を倒したとはいえ未だ脆弱な鎌倉府。薄氷を踏むが如く頼朝のギリギリの駆引きが命綱の儚さモロさ。武家政権の黎明は頼朝に一時の静穏も許さない。傍らには政子。時に叱咤し、時に慈しみ、陰日向となって頼朝を支える。肉親の専横、御家人の欲望、朝廷の野望。幾人もの無念と屍を乗り越え修羅と化す。鎌倉を聖地ならしめる為、二人は修羅と化す。
2018/04/28
のぶ
源頼朝と北条政子を中心とした物語。自分はこの時代の事を良く知らないし、鎌倉幕府が開かれるまでの知識もほとんど持ち合わせていないが、人間、頼朝としての話を楽しめる作品だった。平家との争いに終止符を打ち、源義経ら親族との確執も描かれて、安定した幕府をどうやって築いていったのか。そんな流れで進行するが、将軍としての孤独や正室、政子との関係のドラマも興味深い。大きな事件が途中あまり出てこないので、迫力にはやや欠けるが、一時代を生きた人物の作品として面白かった。
2018/04/30
ゆみねこ
頼朝と政子が作り上げた武家政権は、多くの血の犠牲の上に。肉親を容赦なく切り捨てた非情の権力者と支えた妻。晩年の頼朝を見守る政子の心情が切なく思えました。
2018/08/09
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