オールドレンズの神のもとで
オールドレンズの神のもとで / 感想・レビュー
KAZOO
堀江さんの短編集です。さまざまなメディア(紙の)に発表された18の短編を集められています。数ページのショートショートの様なものから表題作のような結構長いものもあります。読んでいると心が落ち着くというか何かなつかしい感じを受けるものが数多くあります。私にとっては再読する本の1冊です。
2019/02/16
よこたん
“ものごとは最初から真偽が決まっているのではなく、伝える人の品性と本性によって真にも偽にもなる。” なめらかな白い函の中に、きっちりと区切られて詰め合わされたような作品たち。すぐ傍にあるような日常を切り取ったようでいて、手を伸ばしても決して触れることのできない場所を淡々と眺めることしかできないのも、またいい。堀江さんの文章は涼やかな落ち着きがあり、そっと心拍数を整えてくれる。表題作は小川洋子さんっぽい気配が漂うし、少しぞわりとする作品もあってなんとも嬉しい。「柳生但馬守宗矩」「杏村から」「果樹園」が好き。
2018/08/25
クリママ
1編の中編と17編の短編。何もない日常や事件があるもの、それぞれに違うものの、いつのまにかその情景が目の前に立ち上がり、その中にいる。そして心を刺すような鋭い言葉がある。「本当の新鮮さは、はしめて出会ったものに対して感じるのではない。もう出会っていたのに気づかなかったことがらとの再会によって生まれるのだ。」「しかし結局のところ、大人はいつも、あいだにあるはずの大切なものを飛ばして、自分の関心事しか見ないのだ。」… 堀江氏らしい落ち着いた作品集。でも、最後の表題作は趣が違い、私には上手く呑み込めなかった。
2023/04/07
竹園和明
血湧き肉躍る…事のない、微かに聞こえる雨垂れのような静謐な短編集。訳あって子犬の散歩係で報酬を得て暮らす主人公を描く『果樹園』。平坦で細やかな描写が物語をぐっと身近に感じさせる。決して半袖を着なかった腕に傷持つ教師が遂にその傷を露わにする『柳生但馬守宗矩』。生徒の事故を庇う如き教師の大きな愛情。著者の名作『めぐらし屋』を別角度から5頁にまとめた一作も載せている。『黒電話』『ハントヘン』など、絶妙かつ不思議な余韻を残す短編集。著者の世界が濃縮され詰まった温かな一冊だった。
2018/08/14
プル
淡々と目に入るものを描写したものを読むことで、時間の経過を感じられる文章。情景を想像しやすく感じる為なのか、読む速度がゆっくりになってしまう。一編一編は短いと思うのに。自分の頭に残された気持ちや情景を切り替えないと、次の作品が読みにくい。それだけすんなりと入って来てしまう作品である。
2018/08/10
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