選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子
選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子 / 感想・レビュー
遥かなる想い
第50回(2019年)大宅壮一ノンフィクション賞。 出生前診断を 巡る問題に取り組んだ作品である。障害を持つ子どもを産む可能性に対して、その母たちは 何を考え、選択してきたのか?誰が加害者で 誰が被害者なのか? この重いテーマを 丹念に 取材する …多くの当事者の声に 耳を傾けながら、 苦渋の選択の苦しみを知る…重いテーマの 作品だった。
2019/08/04
ちゃちゃ
医療技術が飛躍的に進んだ現代。その恩恵を享受する私たちは本当に幸せなのか。特に生死に関わる多くの選択肢が準備され、私たちは自己決定を迫られる。かつては「天から授かった命」だったものが、今は選別の対象となる。重い先天性疾患を持つ胎児は選別の対象なのか。神の領域に踏み込むことへの畏れ、恐れ。出生前診断の是非を安易に結論づけることは到底できない。「正しい選択」などあり得ない。あるのは、苦渋に満ちた選択を受け入れて生きてゆくことだけだ。けれどそこに、医療者や社会の真摯な支援の手と温かい視線が不可欠だと強く思う。
2019/12/11
あっか
はあ…涙。天聖君、潤君、デイヴィッド君達…本を閉じた今も忘れられません。出産前診断の誤診による田中夫婦の裁判を中心に、今日の中絶に至るまでの歴史、強制赴任の裁判と当事者を取材した1冊。著者の後書きに全て言いたいことが書いてある。正しい正解はない。わたし達ができるのは、その時その時真剣に考え抜きその時ベストだと思うことを決断することだけ。どんな経験や価値観があろうとその選択に他人はとやかく言えないと思う。やっぱりこうして良かった、というのは結果論だと思うし…経済状況や精神状況で取れる選択も変わると思うから。
2019/09/02
読特
ロングフルライフ訴訟。この世に生を受け、苦しみに耐え、短い人生をまっとうした子。苦痛は避けられた。21トリソミー。責任は見落とした医師にもある。我が子に謝罪して欲しい。それが動機で起こした提訴。勝訴判決。だが、主張は汲み取られていない。訴訟は議論を巻き起こす。生きたことが”ロングフル”なのか。そもそも胎児の障害を理由での堕胎は法的に許されない。現実は違う。きれいごとで済まされない。生きにくさを拭えない程度にしか進歩していない科学。”障害”を与え続ける社会。「答えがない」は逃げ。たどり着けなくても考え続ける
2021/12/06
あすなろ
エピローグの医師側弁護士の発言がラストにまた心を揺さぶる。それは恰もこの本の全てを象徴するかの様。私は絶対に許さない。人間が人間の命を選別すること自体。この事件を担当するのが本当に嫌だった、と。出生前診断の誤審で生まれた子とサブタイトルある通り、出生前診断から中絶や母体保護法、優性保護法、強制不妊迄書かれる。実に様々な事や自身の経験してきたことを重ね考え続けた読書だが、著者が読者に突き付けるのは、どんな子を誕生させ、どんな子を殺すのかということ。医学的には誰一人完全に正常な遺伝子を持つ者などいないとのこと
2019/08/19
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