アメリカ紀行
アメリカ紀行 / 感想・レビュー
ころこ
「日本ならば、ひとつコンビニがあれば、そこでこれまでの生活をすべてリセットできる、という安心感がある。」日本の住み慣れた肌感覚と違うため、接触するものが気になる。挨拶のとき、英語で2人称がとっさに出てこない。ゲイの家主に襲われないか気にする。面倒くさいのでDavidと名乗った。サバティカルのアメリカでも、まるでバートルビーのように。非人間的な無関係を徹底化することで、むしろ本当の関係や意味が立ち現れてくる。実際には様々な人と会い刺激を受けるが、触れることの不可能性に帰国後、包装されたコンビニをみて考える。
2019/05/29
Good Tomorrow
ハーバード大学・ライシャワー日本研究所に客員研究員として招かれた4ヶ月の滞在紀行文。ボストン、ニューヨーク、マイアミ、カリフォルニア。一部ドイツ・ミュンヘン。日常の実直な描写と写真、哲学者らしい思弁が自在に行き来する。日米比較文化の観察日記のようでもあり、コーヒーの酸味の違いなど飲食を巡るものから、人種やマイノリティへの洞察、コミュニケーションの仕方の比較等とても面白い。短い文章のなかで言葉の力が強く、読みやすいけど読み難い、薄いけど濃い一冊。
2022/05/21
rors(セナ)
著者がアメリカに短期学外研究で4ヶ月滞在した時の日記のようなもの。海外での慣れない生活や習慣の話は、とても興味深く面白い。英語でコミュニケーションをとり、色々経験した上で、思考する軌跡のようなものもなるほどと思いながら読む。 千葉雅也さんの本は読みやすい言葉と文体で書かれてあるけれど、その一文の情報量が多くて、サラッと読んだ後に何度も立ち止まる。 「マイノリティならではの生き方の逸脱が抑制され、万人の標準化がすすんでいる」なるほど…
2022/06/03
tetsubun1000mg
立命館大学院哲学准教授のアメリカ研究留学滞在記。 哲学のせんせいの本は実在的○○論のような用語を使って普通の人に分かりにくく書く人が多いと感じます。 大学の先生が一人でのアメリカ旅行記としては面白かった。
2019/06/30
qoop
客員研究員として過ごしたアメリカでの一年間を綴ったエッセイ。人・物・風景を通じて語られる著者の内省。非日常を日常として暮らすことで浮き上がる違和感や共感を柔軟に受け止めていて、静かでしなやかな思考のありようが伝わってくる。エッセイとして完成していても素材を調理にかかる手前の一冊と感じるのは著者が哲学者だからかもしれないが、それゆえ一層、フレッシュさが感じられもした。
2022/04/11
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