夢見る帝国図書館
夢見る帝国図書館 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
まずはタイトルに魅かれて。上野公園のベンチで知り合った、なんだか謎めいた魅力的な女性、喜和子さんと語り手の「わたし」との物語。後半はもっぱら「わたし」が喜和子さんの過去を探求するというのがメイン・プロット。そして、それとは一応は独立する形で挿入的に語られる「夢見る帝国図書館」。最後には見事に円環を結ぶことになる。ただ、帝国図書館の歴史それ自体は興味深くはあるが、本編との関りがもう少し緊密な物語を期待していたことも事実。やや肩透かし感が残る。また、喜和子さんの造型の希薄さが好ましくもあり、物足りなくもあり。
2021/03/31
鉄之助
タイトルと装丁が、何とも魅力的。日本初の図書館、上野にあった帝国図書館(現・国際子ども図書館)を舞台として、図書館の歴史が俯瞰的に描かれる。しかし、単なる歴史モノに終わらないのが中島京子の持ち味。「上野的」な空気感、当時の風俗がうまく表現されていた。また、小説中・小説「夢見る帝国図書館」が入れ子二重構造になっていて、これもこれで面白かった。それにしても、軍備などには多額の国家予算をつぎ込みながら、図書館はいつも「金がない」のは、今につながる日本の現状。いつになったら、文化先進国になれるものやら…。
2024/03/07
starbro
中島 京子は、新作中心に読んでいる作家です。旧帝国図書館(現国立国会図書館国際子ども図書館)を巡る幻想譚、中島 京子ワールド全開です。旧帝国図書館建築100周年記念展示会 https://www.kodomo.go.jp/event/exhibition/tenji2006-03.html は見逃しましたが、まだ訪れたことがない国立国会図書館国際子ども図書館 https://www.kodomo.go.jp/100th/ を近いうちに訪問したいと思います。
2019/06/25
さくらさくら
『私と喜和子さん』の出会いと日常と『夢見る帝国図書館』の物語とが交互に、そして関係性を持ちつつ話が進んで行く。『夢見る帝国図書館』では帝国図書館と文豪との関わり合いが面白い、そして後半は戦争の悲惨さをクローズアップさせている。 残念なのは戦後、帝国図書館がGHQによる焚書の舞台になった事を省いている事だ。この本の中で日本政府の検閲を悲しむ本たちの呟きがあるが、GHQによる焚書(本の破棄)は7000冊以上だ。なせそれを省きGHQによる日本国憲法草案を良い話にまとめたのか?著者の意図を感じて後味が悪かった。
2019/11/03
ウッディ
作家の私が上野の公園で偶然出会った喜和子さん。本を愛し、自由に暮らす彼女の生き方に惹かれていく私は、図書館の話を書いてほしいと依頼される。本が好きな人間にとっては、図書館は特別な場所であり、それは、歴史に名を残す文豪にとっても、一介の庶民にとっても同じである。図書館を作り守ろうとした偉人たちと図書館にまつわる幻想的な物語を織り交ぜながら、喜和子さんとの交流や彼女の過去を巡る実話風のストーリーが進み、心の琴線に触れる文章が心地よい。特に樋口一葉に恋した図書館の物語が可愛いかった。まずまずでした。
2019/08/15
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