中野京子と読み解く 運命の絵 なぜ、ままならない
中野京子と読み解く 運命の絵 なぜ、ままならない / 感想・レビュー
みっちゃん
たった1枚の絵中にこんなに様々な事情、背景、物語があるなんて。中野京子さんの多彩な解説で、ただの平面の絵画が奥行きと広がりのあるものに感じられる。自分の乏しい想像力が喚起される。何度見ても怖いな、と思ってしまうのはバーン・ジョーンズの「赦しの樹」まるであの貞子の如くにゅるにゅると木から伸びた肢体、自分を棄てた男だけをじっと見据える無表情な顔、男の身体に絡み付いた腕は決して離されないだろう。怯え、怖れる男の顔。でももう無理、絶対逃げられない。この後どうなるのか。想像するだに恐ろしい。
2021/01/22
trazom
「運命の絵」シリーズもこれで3巻目。手を変え品を変え、次々と新しい話題を提供する中野さんには畏れ入るばかり。本書では、主要絵画に引出し線で解説を記述するという新たな工夫も盛り込まれている。「マラーの死」の表紙のインパクトは絶大。絵画を鑑賞しながら、神話や聖書をはじめ、フランス革命やスペイン独立などの歴史を学ぶ充実感を与えてくれるのが中野さんの本の真骨頂。男の身勝手が生んだ運命に対しては、「常に男性の味方であり続けた非フェミニストの筆者としては…」と、さりげなく男性読者に媚びを売りながらの説明も絶妙である。
2021/03/06
keroppi
絵は運命の瞬間を描き出す。人の生死や心の奥底までも。同じテーマやシーンでも、描く人間によって、見方が変わってくる。二つの絵を提示し語っているものは、特に面白い。作家により、こうも違うものか。一番惹かれたのは、鴨居玲「1982年 私」。心の叫びが聞こえくるようだ。この本で、今年ちょうど400冊目となった。もう1冊いけるかどうか。
2020/12/29
kaoru
中野先生の該博な知識にはいつも驚くが、名画を見るうえでは必需だと思わされる。表紙の『マラーの死』はフランス革命さなかの有名な事件。映像のなかった時代、絵がプロパガンダの役割を果たしたと言う一例。『神曲』のダンテがベアトリーチェを神格化しつつ放蕩に身を委ねたこと、フランス革命では修道女もギロチンの犠牲になったこと(ドラローシュの『ギロチン』)、古代ギリシャの彫像や浮彫りが実は極彩色に塗られていたこと、クールベと鴨居玲の対比などどれも蒙を啓いてくれる。巻末近くのゴヤ『マドリード、1808年5月2日』、→
2021/01/16
あっか
新刊。運命の絵シリーズ(?)第三弾の由(←使いたかっただけ笑)。全31作の絵画と中野さん節が利いた解説が掲載されています。こんな方が美術の先生だったら、世界中の誰しもが美術(付随して世界史も)大好きになるに違いない。そんな確信を抱くほど中野さんの講義は面白いです。1枚の絵画から、その当時の国の歴史や情勢だけでなく書き手の心理や人生まで紐解いてえぐってしまうのだからつい惹き込まれてしまう。ちょっと俗っぽいのがまたちょうど良い感じに知的好奇心をくすぐり満足させてくれます。早くもまた次の新刊を読みたくなる!
2021/01/14
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