映画のメリーゴーラウンド
映画のメリーゴーラウンド / 感想・レビュー
もりくに
流行りの映画会社の太鼓持ちもしかねない映画ライターなるものと違って、川本三郎さんの作品論、監督論、映像論にとらわれ過ぎず、ディテイルに丁寧に目を向ける映画評は私にはとても好ましい。この本はディテイルに拘った「尻取り遊び」。ウディ・アレンに始まり、ウディ・アレンで終わる。各章(周)のタイトルもうまく考えられていて、「○○の話から ・・・ 最後は○○につながりました」。「音楽」つながりで、「ローマの休日」、「ここに泉あり」、「男はつらいよ」とつながる。「女性の自立」観点では、「安宅家の人々」から「鰯雲」へ。
2021/12/01
斉藤フィオナ
川本さんの語る映画のついての話は作品や俳優に対する愛が感じられて大好きだ。私がしばしば思う“映画の中に出てくるディケンズについて”(誰かまとめて教えてほしい)を思いがけず書かれている章があり、大感激。川本さん、「名もなきアフリカの地で」のなかでも主人公の少女がディケンズの主人公に例えられる(“骨董屋”だったか“リトル・ドリット”だったか)ところがあります!と思わず話しかけたくなる。 つづく⇒
2021/07/13
belle
あとがきに「映画の尻取り遊びである。連想ゲームと呼んでもいいかもしれない」とあった。それも映画の中の小道具など細部に注目してつなげている。著者はシアーシャ・ローナンがお好きなのかな。主演した「ブルックリン」は何度も観ているが、水着のシーンは印象的だ。グリーンと白の縞模様のワンピースもお似合いだったので、私なら「ローマの休日」のオードリーにつなげるか。いろいろ連想や想像をしながら読んだ。メリーゴーランドに乗りながら読んでみるのもいいかも。エンドレスで乗せてくれる遊園地はどこかにないかしら。
2021/04/29
更夜
実際、小説や映画を読んだり観たりするより、数倍楽しい読み物になっているのは川本三郎さんと先日亡くなった北上次郎さんだったと思います。お二人とも「評論致す!」という目を吊り上げることなく、こんな映画の、小説のここに気が付きましたか?面白いでしょう?と語りかけてくるような穏やかさがあります。私はもう映画評論はいいので、こういうディテールの細かさに敏感に気が付く映画の見方をしたいと思います。映画も色々だから時には苦言も呈したいと思うけれど、それよりもいいところを紹介する、お話しする、その姿勢が素晴らしい。
2023/02/24
安土留之
ウディ・アレンとニューヨークの話から始まり、著者の連想は次々といろいろな映画に飛び、最後にまたアレンとニューヨークに帰ってくる66のエッセイを収録。トリビアな話が多いけど、ああそうだったのか、という話が多く、面白かった。コニー・アイランドの名物のホット・ドッグ、自意識過剰のカポーティの図書館チェック(今の時代のエゴ・サーチ)、コンマン(詐欺師)を描いた『スティング』が観客を騙す仕掛けになっていることなど、面白く読んだ。本書を片手にとりあげられた映画を観るのも一興でしょうね。
2021/05/23
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