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星影さやかに

星影さやかに

星影さやかに

作家
古内一絵
出版社
文藝春秋
発売日
2021-06-10
ISBN
9784163913827
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星影さやかに / 感想・レビュー

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いつでも母さん

東京オリンピックが終わって一ヶ月後に亡くなった父。長兄と妹の手に余る遺品の日記を手にした次男・良彦。全てを読み終え故郷で暮らす母と二人でその年の大晦日の夜ー長年にわたり抑鬱状態で自死を希求する父の想い。旧家に嫁ぎ厳しい姑に仕え、全てを受け入れ真摯に暮らしてきた母の想い…そうなのだ、人は一面だけでは判断できない。酸いも甘いも、白も黒も、どちらか一つだけが本当ではないのだ。泰然と応える母が清々しい。苦楽もまた、二つで一つだと気付く良彦。間もなく父親になる彼を最後は応援していた私だった。

2021/07/02

ウッディ

教鞭をとっていた東京から戻った後、心を病んでしまった父、近所から「非国民」と呼ばれ、恥ずかしく思っていた良彦は、終戦から20年後、東京オリンピックの年に父の日記を読み、苦悩を知る。鬱病などの精神疾患に理解が得られなかった時代、彼の生き辛さは想像に難くないが、厳しい祖母と忍耐強い妻、タイプは違うがその根底に流れる温かい愛情に救われた思いがしました。ただ、作品全体に流れる陰気な雰囲気に、読んでいて暗い気分になってしまい、短い作品にも関わらず、読むのに時間がかかり、個人的にあまり面白くなかった。

2021/08/26

しんごろ

戦時中から戦後にかけたある家族の物語。たとえ家族であっても、相手がどう思ってるのか、思われてるのか、それは決してわからない。誰かが心が病んでいても、余所から陰口を叩かれていても、家族を守ろうとする姿が美しい。バラバラのようにみえて、実はしっかり繋がってる家族だった。これが家族の絆というものなんだろう。寿子と多嘉子、女性陣は強い。きっと美津子もこの強さを遺伝してることだろう。寿子が、この家族の太陽な存在で素敵だなと思う。家族は大切なもの、戦争はまったく必要のないものがわかる温かさのある物語だった。

2022/10/24

のぶ

自分の知らない“昭和”の一つの家族を描いた物語だった。本書はプロローグ部とエピローグ部が東京五輪のあった昭和39年。本文は昭和19年から26年の戦争を挟んだ世界で展開される。話は父親の良一と次男の良彦が中心となる。戦時中、父は近所から「非国民」と呼ばれ、良彦は立派な軍国少年となるべく毎日を過ごしてきた。戦争が終わり、手のひらを返したように世界は変わる。昭和39年に良彦の元に父の遺品の日記が届く。そこには父親の精神的苦悩が描かれていた。人生や幸せは時代で簡単に変わってしまう。そんな事を感じさせられた。

2021/06/20

モルク

戦時中東京の中学で英語の教鞭をとっていた父は「日本は戦争に勝てない…君たちは戦争に行くな」と生徒に告げ罷免となり、神経を病み故郷古川に帰ってきた。しかしここでも非国民と呼ばれ書斎に引き込もってしまっていた。家をきりもりし、威厳があるが威張り怒鳴り散らす祖母、従順な母、つかみようのない父に次男良彦は複雑な思いを抱える。昭和39年東京オリンピックの1か月後に亡くなった父の遺した日記。そこには父の苦悩が綴られていた。一族を守るため奮闘した祖母多喜子と夫を支える母寿子の姿が逞しく印象に残った。

2021/08/25

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