結 妹背山婦女庭訓 波模様
結 妹背山婦女庭訓 波模様 / 感想・レビュー
いつでも母さん
前作『渦』を読んだのはいつだったか・・(汗)半二の熱に煽られた記憶がある。半二亡き後、ゆかりの面々が愛おしく描かれている。松へ、専助、柳、徳蔵そして半二の娘・おきみ・・浄瑠璃に魅入られ歌舞伎芝居に活きるそれぞれの地獄。ぞれぞれの縁。それぞれの糸。人生の波に揉まれ結びの先に、後世まで続く世界が見えた。
2021/09/01
trazom
「渦」の続編。物語の中心は近松半二の娘・おきみ。半二、菅専助などが操浄瑠璃の灯を守り続けようと苦悩する時代に活躍した実在の人物(耳鳥斎、近松徳三、近松柳、十辺舎一九など)が絶妙に配されている。「伊賀越道中双六」の合作者である近松加作という人物の謎については、岡本綺堂が「近松半二の死」でも取り上げているが、大島さんは、それを上回る大胆な仮説で、実に面白い。それにしても、朝井まかてさん「眩」、澤田瞳子さん「星落ちて、なお」、そして、この小説と、女流作家が、天才芸術家の娘を描くときの想像力の鋭さには畏れ入る。
2021/09/20
のぶ
「渦 妹背山婦女庭訓魂結び」の続編だが、本作も浄瑠璃の魅力や、当時の活気が伝わって来るようで良かった。松屋平三郎という操浄瑠璃に入れ込んだ人物を主人公のひとりに据え、物語を展開させていった。当時の道頓堀には芝居小屋がひしめき合っていた。やがて近松半二が世を去り、浄瑠璃の演目は後に残された人たちに委ねられることになった。娼家の跡取り息子でありながら浄瑠璃作者になった徳蔵の情熱や、半二の娘のおきみからあふれでる才気が支えていく。日頃、馴染みのない浄瑠璃を、身近に感じさせてくれた興味深い一冊だった。
2021/08/18
ちゃちゃ
あぁ、このリズム。操浄瑠璃に魅入られた者たちの人間模様が、やわらかな大阪言葉で語られて心地よい。前作『渦』の近松半二の傑作『妹背山婦女庭訓』から繋がる縁が、浄瑠璃の海に“波模様”を描いて広がってゆく。娘のおきみや耳鳥斎、近松徳蔵や近松やなぎ、あの人もこの人も切っても切れへん「縁の糸」で“結”ばれて、浄瑠璃地獄に堕ちはった人なんや。そやけど、その縁はいつしか虚実のあわいに花を咲かせて、至高の芸となる。うちらはそれを観て読んで楽しませてもらうんや。ままならぬ世、そやからこそ人生はおもしろいんやなぁ。
2021/10/28
なゆ
ああ、面白かった!ワクワクした。浄瑠璃や歌舞伎はよく知らないけれど、なんかものすご魅力的に思えた。「渦」のその後、操浄瑠璃に魅せられた人たちがやっぱり渦巻く道頓堀と北新地。近松半二の娘おきみの掴みどころのない感じや、どんどんのめり込んでいく松へ(耳鳥斎)がよかったなぁ。みんなを繫ぐ役どころやし。近松加作を生かすの殺すのとか、浄瑠璃作者をあきらめて江戸に行った余七が大化けしたのに驚いたり、ずんべらぼんかツボにはまったり、思わぬとこで涙が出たりと、とにかくこの世界を堪能させてもらった。徳蔵で締めたのもいい!
2021/10/22
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