夜に星を放つ
夜に星を放つ / 感想・レビュー
さてさて
“星は光を放ちますが、当然ながら同時に影も生まれます”と語る窪さん。この作品では、姉妹、妻子、そして母親というかけがえのない存在をそれぞれの理由の中に失い、それによって致命的に傷つきもした主人公達が、新しい環境の中でそれぞれに新しい人達との繋がりを通じて新しい人生への一歩を踏み出す様が描かれていました。そしてそんな彼らを見守るように天上の空に輝く星、星座の姿が印象深く描かれるこの作品。新しい人生に歩み出す人達の姿をそれぞれに見る極めて読後感の良い結末の中に、窪さんの優しい眼差しを感じた印象深い作品でした。
2022/07/23
パトラッシュ
暴力と悲惨さでヒリヒリさせる『朔に満ちる』や『朱より赤く』などの長編に比べ、少年少女の苦さと希望の交錯するエピソードを描く作品集は異色だが、心に傷を負った人の模索というテーマで統一されている。大切なものを失った過去を持つ登場人物は生きにくさに苦労しながら、西洋の星座絡みの伝説が典拠となる展開で再生への手がかりをつかむ。欠落が満たされるとは思えない場合もあるが、夜空に輝く星のように人生の重要な転換点を見つけるのだ。特に「真珠星スピカ」と「星の随に」は、母を失った子の心情と物語がうまく融合し読み応えがあった。
2022/08/17
starbro
第167回直木三十五賞候補作3作目(3/5)、窪 美澄は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 家族の喪失と星に纏わる短編集、直木賞候補作になるだけあって、どの作品もクオリティが高いですが、オススメは『真夜中のアボカド』&『真珠星スピカ』となります。 本作読了後も、今回の直木賞予想はステイ(本作、〇対抗)です。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163915418
2022/06/19
bunmei
大切な人を失った立場の違う5人を、星をモチーフに描いた短編集。コロナ禍の時代を背景に、自分の生き方に息詰まりを感じながらも、「どのように振舞うべきか?どのように生きるべきか?」と自問自答を繰り返し、必死に自分の居場所や心通わす人を模索していく主人公達。最終的な結末はほんの少し光を灯し、読者に委ねられて綴られてはいない分、今後の主人公達の幸せを、祈らずにはいられない。これまでの窪作品の様な、男女の赤裸々なドロッとした感情の作品とはひと味違い、主人公達の切ない心の葛藤や揺らぎが、写し出されてくる作品である。
2022/08/08
うっちー
祝直木賞です。この本もですが、窪さんの実績が評価されたのでしょう。
2022/07/22
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