極楽征夷大将軍
極楽征夷大将軍 / 感想・レビュー
鉄之助
足利尊氏と弟・直義の少年期から亡くなるまでの壮大なドラマだった。まるで二人のやり取りを見てきたように描写する垣根涼介。超長編作も、飽きずに一気読み。さすが直木賞受賞作。「中身のない虚無だからこそ~、頭の中が頭陀袋同然だからこそ、かえって人に受け入れられる」尊氏のとらえどころのない魅力が、ストンと腑に落ちた。
2024/01/01
starbro
垣根 涼介は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。足利尊氏は、当然知っていますが、足利尊氏・直義兄弟の建幕物語は初めてです。足利尊氏の性格が本書の通りだとすると源頼朝とは対極のような気がします。読み応えがありましたが、フォント小さめ&二段組&文字密なので、還暦手前のオジサンには辛い読書でした。足利尊氏・直義兄弟が鎌倉で青春時代を過ごし、足利尊氏が一時期、鎌倉殿と呼ばれていたとは思いませんでした(驚) https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163916958
2023/06/02
パトラッシュ
小沢一郎は海部俊樹を首相に担いだ時「神輿は軽くてパーがいい」と公言したが、確かに一面の真理だ。周囲の意見を聞かず自説に固執する上司より、やりたいようにやらせて責任は取ってくれる上司を部下は求める。本書に描かれる足利尊氏は軽すぎてパーすぎて無欲だが戦争だけはうまく、全てを思う通りに動かそうとした上に恩賞をケチった後醍醐天皇と比べ魅力ある大器とされた。尊氏を補佐した直義と師直は理想に囚われて政権分裂を招き、共に不幸な最期を迎えた。始末に困る極楽トンボが生き残れたとは、政治家の権力闘争がアホらしく見えてしまう。
2023/06/14
bunmei
足利尊氏が、室町開幕に至る政権争いの紆余曲折を綴った歴史大作。尊氏と言えば、ざんばら髪の騎馬武者、勇猛果敢な武将のイメージ。しかし本作では、執着心もやる気もなく、怠惰な武将として描かれている。そんな尊氏が征夷大将軍まで上り詰めた経緯を、尊氏のブレインとなって政権を切り盛りしてきた、尊氏の弟直義と足利家の重臣高師直の活躍を中心に描いている。無能な尊氏を担ぎ上げ、カリスマ的な影響力で、直義等が武士の世の再建を目指す。その中で血で血を洗う動乱の世を、懸命に駆け抜けていく武将としての悲しい運命に、胸が打たれる。
2023/08/05
まえぞう
表題は足利尊氏のことですが、物語は弟の直義と執事の高師直の視点から描かれます。尊氏は日本史のなかでもとらえどころが難しい人の代表で、作者もどう表現するかに苦労しているように思います。大きな流れとしての世間を体現するものとして描かれていますが、私的にはちょっと違うかなぁ、という感想です。それでも南北朝の動乱を味わうにはちょうど良いかなと思います。
2023/06/21
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