尾崎翠 (文春新書 16)
尾崎翠 (文春新書 16) / 感想・レビュー
コットン
愛情ある楽しい小説『かもめ食堂』などで知られている群ようこさんによる尾崎翠の(才能がありながら不運とも言える)人生を彼女の作品とともに紹介した本。群さんも言っているように『第七官界彷徨』は素敵だ!
2017/05/13
吾亦紅
著者の群ようこさんだけでなく、角田光代さんも心酔し、同時代の林芙美子や太宰治らもその才能を絶賛していた作家「尾崎翠」。『第7官界彷徨』も他の作品も未読だがその名前を近年よく耳にする。東京での短い作家生活から身を剥がされるように郷里の鳥取へ帰るその道中で、列車から飛び降りようとしたという。その後長い長い余生の間、結局もう作品を残すことはなかった。が、最後まで東京への心を残していた。彼女の作品の何がどう凄いのか、未読ではわからない。読む。
2023/01/20
みつ
尾崎翠の『第七官界彷徨』に衝撃を受けた著者の一冊。「すべてが・・気に入っているわけではない。」としつつ、たった一曲があれば「来てよかった」と思えるコンサートに擬えて「自分の好きな歌ではなくても、・・人が創り出すもののすごさを知ったということが、忘れられない感覚となる」(p10)と言う。ここから筆者は、尾崎翠作品の多くの引用とともに生涯を辿っていく。ただ、この記述方法だと尾崎作品の魅力は伝わりにくいのではないか。労作であるが、作品に驚いた自分としては、『彷徨』等の名作に、さらに焦点を当てて欲しかった、とも。
2022/09/10
yn1951jp
尾崎翠の作品の中に翠自身の姿を追う。特有の美意識、嗅覚触覚感覚と緻密に設計図を描くような構成、空想好きな少女性と竹を割ったような男性気質、銀幕上のキャラクターへの憧れ、分裂症状の発現とミグレニンへの依存、刺激の多い東京の生活への憧れと鳥取での平穏な生活。浜野佐知の映画「第七官界彷徨 尾崎翠を探して」(1999)では、白石加代子が翠を好演している。群は「樋口一葉に奇蹟の一年があるように翠が幻覚と戦いながら書いた一年も作品にとっては最高の一年だった。」「日本の小説は『第七官界彷徨』一作でいい」という。
2014/09/15
loanmeadime
尾崎翠の作品からの引用が多い評伝ですが、行間のところどころから著者の翠への愛を感じる一冊でした。文庫のちくま日本文学・尾崎翠を読んだだけですが、収録の11作を自分が良く覚えているのに驚きました。秀作揃いということなのですね。
2020/01/03
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