新・百人一首 近現代短歌ベスト100 (文春新書 909)
新・百人一首 近現代短歌ベスト100 (文春新書 909) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表紙を見て、最初の驚き。なんと穂村弘が4人の選者の1人に名を連ねている。一般の知名度はともかく、歌人としてのキャリア、格式では他の3人は雲上の人たちばかり。若手代表として選者に抜擢されたのだろう。さて、選者が選んだ百人だが、まずは妥当か。代表歌については残念に思うものもあるのだが。例えば福島泰樹。選歌もいい。あるいは、たしかに彼の歌と時代を代表するかもしれない。しかしまた「仏文の二月の花」の哀しみと抒情も捨てがたい。どの歌人についても選者の間でも揺れただろう。選歌の妙は道浦母都子の歌。他の歌群も秀逸。
2016/09/18
新地学@児童書病発動中
現代を代表する4歌人が明治から現在までの100首を選出。あまり馴染みのなかった現代短歌が多く収録されているのが嬉しかった。俳句と異なり、物語性を持つのが短歌だと分かった。私の好きな穂村さんの活躍が嬉しい。確かな選択眼で面白い短歌を選んでいる。笑えるエッセイの印象が強いけれど、穂村さんはやっぱり歌人なのだ。この本を読んでますます短歌が好きになった。お気に入りの一首をご紹介。「そんなにいい子でなくていいからそのままでいいからおまへのままがいいから」 (小島ゆかり)
2014/05/21
みつ
気の向くまま何年も読んで来た本。4人の選者のうち2人が明治以降の歌人(天皇皇后を含む。)百人を選び、4人が選ばれた25人ずつについて代表歌1首と、「さらに読みたい」秀歌2種を挙げる。初めて知る歌人も多数。佐々木信綱、前田夕暮、北原白秋、寺山修司、小野茂樹、栗木京子は「やはりこの歌」という思いが強い。一方で貧しい知識を顧みず、斎藤茂吉、与謝野晶子、三ヶ島葭子、河野裕子は、三首の中に入れて欲しかった作があるが、これは望蜀の嘆というべきであろう。どのように歌が選ばれたかの経緯がつぶさにわかる座談会も興味深い。
2023/09/18
もりくに
現代短歌の4人が選んだ近現代短歌の「百人一首」。明治天皇(生涯93000首!)から、選者の穂村弘まで。人選は、戦後生まれの永田和宏と、さらに若い「ニュー・ウエーブ」の穂村弘。代表歌は、昭和一桁生まれの岡井隆と馬場あき子の4人で共選。巻末の4人の座談会が、短歌界での選者たちの位置関係を表していて、興味深い。近代短歌は明治30年前後に始まり、現代短歌は敗戦からが定説とのこと。前衛短歌は塚本邦雄や寺山修司の時代。前衛は「古びやすい」が、写生や個人生活を重視する方法論とは明らかに違う「思想表現」にまで高めたと。
2018/09/08
syota
ヴェネツィアさんの書評に触発されて購入。明治以降の近代短歌については高校の現国程度の知識しかなく、戦後の現代短歌に至っては全く門外漢の私にとって、得難い一冊となった。良さが解らず自分の国語力や感性の不足を痛感した歌もあったが、反面平明でも心に沁みる歌もあって、収穫多し。夜更けに音もなく散り続ける桜を幻想的に詠んだ馬場あき子や、機動隊に対峙する緊張感とレモンの香りの対比が鮮烈な道浦母都子、俵万智を初めて読んだときと同じような衝撃を受けた穂村弘など、出会えて本当によかったと思う。長く手元に置いておきたい。
2016/10/16
感想・レビューをもっと見る