欲望の名画 (文春新書 1228)
欲望の名画 (文春新書 1228) / 感想・レビュー
rico
「欲望」を鍵に名画を読み解く。安定の中野節は本書でも絶好調。雑誌連載とかで1つの章は短めですが、読者に「何これ?」と興味を持ってもらうために絵の一部を拡大し扉絵に使うという趣向は、なかなか新鮮。ぱっと見て「あ、あれ」とわかるのもあれば、「え、こんなのあった?」と改めて図版を見直したり。展覧会では全体見て解説読んで、あとは人の流れに押され・・・て感じで、あんまりちゃんと見てないなあ・・・と反省。オフィーリアの傍のコマドリは気づかなかった。ルソーはやっぱりどこ見てもヘン。ラファエロのやんちゃ天使がかわいい!
2019/11/09
keroppi
それぞれの絵画を、最初にある部分のドアップで見せる。こんな風に絵を見たことはなかった。それから見えてくる人間の欲望。「怖い絵」とはまた違う絵画へのアプローチ。人間の欲望は、かくも深く、絵画の魅力は、かくも深い。
2019/10/28
あっか
もうやっぱり中野京子さんの絵画解説、最高ー。こんなに知識欲が満たされることはないし、時に痛烈な弁舌が面白おかしい。1枚の絵画が、中野さんの弁によって1つ1つの小物までもが鮮明に浮き上がって来ます。時代考証にも明るく、また依頼主がどのように画家に依頼したか、どのような性格の画家がどのような意図を持って描いたのか、奥行きを持ってその絵画を知ることもできます。1発目のドラクロワからして、感覚だけで絵画を見るよりもその裏まで知ってきちんとおいた方が何倍も楽しめる、ということがよく分かりました。ラファエロは天才だ…
2020/01/10
trazom
「怖い絵」「名画の謎」「運命の絵」などに続き、まだまだネタが尽きない中野さんには脱帽である。この本でも、確かに「欲望」で括るのはちょっと無理スジかという作品もあるが、それでも読ませてしまう筆力は見事。背景となる神話や歴史、アトリビュートなどの説明の客観性と、主観的解釈を躊躇しない踏み込みの良さが見事に共存している。更に、この本では、扉ページに、絵画の一部を拡大掲載し、画家名・対象などを読者に推理させるような趣向が見事にハマっている。最後が、ボッティチェリの「地獄の見取り図」という趣向も、何とも憎い。
2019/10/15
キムチ
中野氏の本が大好きなので結構読んでいるが、被っている作品が有っても、問題外。面白い!の一言に尽きる。人間を人間たらしめるのは「欲望」という切り口なのでどのページの解説も氏の学術知識に裏打ちされている事もあり 読ませる。個人的にボスとレーピンが好き。極寒のボルガ川の船曳に感じる空気と気持ちの冷たさに身が縮む。装丁のフェルメールの彼女が着ている毛皮コート・・ファンにとってはお馴染み・・思わず笑みも浮かぶ‥ここにも隠れている欲望。中野先生のペンはまだまだ冴えを見せ走り続けて行きそう。
2021/06/18
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