白い炎 (文春文庫 104-11)
白い炎 (文春文庫 104-11) / 感想・レビュー
真香@ゆるゆるペース
実家本。井上靖先生初読み。時代背景は、昭和20年代後半から30年頃にかけて。ヒロインの那津子は、幼なじみの俊太郎と相思相愛の仲。でも、ちょっとすれ違っていた隙に親友の愛子に奪われ、二人は結婚してしまう。俊太郎への想いを断ち切れずにいる中、尾瀬に旅行した時に出逢った豪次から熱心に求婚され、請われるまま結婚…いうストーリー。半世紀以上も前なので考え方や恋愛観は今と大きく異なるけれど、4人の行方はどうなっていくの?とハラハラさせられ、面白く読めた。ラストは切なくも救われるような展開となり、概ね満足。
2020/09/21
michel
★4.7。長い年月に渡り、重く澱む悲しい愛で貫かれた物語。那津子と木津の断ち切れない愛と、那津子が的場との間に知らぬ間に築いていた愛。対照的な2人の男に那津子は生きた。ー木津に対する悲しみも真実なら、的場に対する愛情も真実だったー 愛はそれぞれが本物であるし、比較できるもんじゃない。人は生きている限り人を傷つけないわけにはいかない。にもかかわらず、人は人を愛さずにはいられない。重苦しい悲恋の物語でありながら、爽やかな安堵を以って結ばれるため、美しい解放感の読了であった。タイトルが秀逸。
2021/01/09
巨峰
潔癖さゆえに那津子は、彼のたった一度の過ちをどうしても許せなかった。そして、彼は過ちの相手である彼女の友人と結婚をして、次第に不幸になっていく。一方彼女には、言い寄ってくる、生命力に満ちた男性がいるのだがそれでも・・・・。彼と会いたいとは思わない、よりを戻したいとも思わない。だけど、想いはどうしても心から取り除くことはできない。昭和30年頃の尾瀬、東京、大阪、静岡を舞台に、静かに深く精神的に綴られる今世では結ばれることのない恋愛の物語。
2010/04/01
y_e_d
作者らしい、上品な、息を呑むような美しい筆致に溜息が出てしまう。滲み出てくる情感、静かな映画見ているような描写。忘れられない同士の幼馴染の男と女。それぞれに本当に好きとは言えない勝気な相手と結婚してしまったが、踏み外しそうになっても辛うじて踏みとどまる。最後の木津の結末は悲しいが、那津子は予想と違うエンディングだった。でも、これで良かったんじゃないかなと。
2018/03/31
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