無宿人別帳 (文春文庫 ま 1-83)
無宿人別帳 (文春文庫 ま 1-83) / 感想・レビュー
旗本多忙
正式にいうと「家数人馬書上帳」というものだそうだ。別に無宿人別帳があるわけではなく、この家数人馬書上帳に載ってない者が無宿人といわれるそうだ。刑期を終えた者もいれば、火事で暫時解き放されて逃亡、拷問の末に無理に犯罪者にされて島送り、無宿人は誰にも信用されない、ひっそりと暮らしていても素性が分かれば世間から白い眼で見られる。更正しようにもたちの悪い十手持ちがつけ狙い、また罪をおかさせようとする。そうした境涯に生きる無宿者の姿が10編収録されているが、どう言っても己の犯したことが終生尾を引くのはやむ終えない。
2023/04/26
Yu。
江戸後期から幕末にかけ “無宿人” と呼ばれる戸籍を持たぬ者達が江戸で暮らす為には地主 家主 五人組などの保証が要り、それがない場合、侮蔑や差別、また謂れ無き罰までをも着せられるのだ‥ そんな制度の歪みで泣く者達の恨み辛みの群像劇に魅せられる十篇の清張ワールド。。お気に入りは、ヤツは権力を笠に着た外道だね‥ そんな彼には地獄のキツ〜いお仕置きが待っている「町の島帰り」。切ないながらも義理と人情が垣間見れる温かな着地にホッとする「左の腕」。
2017/11/07
アーちゃん
初出昭和三十二年~三十三年「オール読物」。様々な事情で無宿人となってしまった男たちを描いた短篇集。「左の腕」のみ別のアンソロジー(「親不孝長屋」)で既読でした。ほとんどの話に犯罪と牢屋が出てきて「俺は知らない」のように救われない話もありますが、どれもしっかりと読めました。流行がない分、筆者の場合には時代小説の方が読みやすいのかもしれません。見る機会があれば「左の腕」のドラマも見たいと思いました。
2016/11/29
mam’selle
江戸時代後期、綻びを見せ始めた幕藩体制の中で農村から都市へ来た無宿人の悲しい人生を描く作品。 伝馬町の牢屋、八丈島の島流し、佐渡金山、佃の石川島人足寄場それぞれ怖いお話だった。これを子供の頃に聞かされたらきっと悪い事出来ないだろうなと思います。
2019/05/12
目黒乱
江戸時代、人別帳(戸籍)から除かれた無宿人たちの悲哀を描いた10の短篇集。中でも「逃亡」は、生きては帰れぬ佐渡金山に送られ、過酷な水替人足をやらされている無宿人たちが、佐渡ヶ島からの脱出を企てる逃亡劇で、現代の物語慣れした読者ならおおかた結末の予想はつくが、ザッツ・エンタテインメントといったどんでん返しに、「くぅ~」とついつい、良質の作品を読むと誰もがもらす喜悦の喘ぎ声が出てしまうのであった。
2014/05/15
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