宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション 上 (文春文庫 ま 1-94)
宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション 上 (文春文庫 ま 1-94) / 感想・レビュー
Aya Murakami
10年以上前にリアル書店で購入した本。 若干文学や芸術にまつわる話が多めの印象。ラスト2作品は昭和の闇のお話。 或る「小倉日記」伝は障害を持った主人公(原因は近親相姦か?)が鴎外が残したとされる(実は後々主人公とは遠い場所で出てきます)小倉日記捜索のお話。頭がいい主人公は多分おじいさんに似たのですね(働くのは苦手だった模様)。戦争で鴎外も漱石もない状態になったのに図書館や青空文庫で気軽に作品に触れることができる現代の私。しかしながら活字離れが進み母も弟も鴎外のことを聞くと「頭がいたい」と。
2024/03/16
ふじさん
松本清張は、私にとっては特別な作家。私の二十代、三十代は、彼を抜きにしては語れない。常に、彼の作品を手元において読んでいた。今となっては、懐かしい思い出。或る「小倉日記」伝から始まり、恐喝者、一年半待て、地方紙を買う女、理外の理、削除の復元、捜査圏外の条件、真贋の森等、今読み返しても、やはり面白い。今だにドラマ化されるのが分かる。昭和史発掘で226事件や日本の黒い霧での追放とレッド・パージも初めて知る事実が語られていて興味をそそられた。個人的には、「一年半待て」「地方紙を買う女」「真贋の森」が面白かった。
2024/09/02
おか
各章の最初に宮部みゆきさんの前口上が有るのも興味深い。宮部みゆきみゆき責任編集とある通り 宮部さんの大好きな松本作品が系統だって並べられている。殆ど既読作品だが『削除の復元』は多分読んでいない。森鴎外について 面白い考察がある。そして今作で一番だったのは『日本の黒い霧』(1960年〜文藝春秋)と『昭和史発掘』(1964年〜週刊文春)日本の〜は上下巻、昭和史〜は全十三巻を抜粋し「2、26事件」と「追放とレッド・パージ」を紹介している。これだけでも 読んだ価値があり 流石社会派小説家だと納得する。
2018/12/16
goro@80.7
「一年半待て」はやはり名作ですが、この宮部コレクションの中で初めて読んだ「真贋の森」が気に入りました。復讐の計画を進める暗くも熱い想いと破綻した後のある意味清々しさが印象に残る。犯罪に走る、落ちる人たちへ何故か寄り添ってしまうのだ。しかしそう上手くは行かないよと清張御大は戒めてくる。『或る「小倉日記」伝』は犯罪小説ではないが「砂の器」的な趣が涙をそそる。主人公田上に清張は自分の姿も見たのかもしれない。そして本書を読んだ後はリルの歌や玉堂の画を検索してしまうのです。また少しづつ清張を読みたいです。
2021/05/19
タツ フカガワ
清張さんは生涯260の短篇を遺したらしい。そのなかから“宮部みゆき責任編集”と銘打って全3巻にまとめた短篇集で、この上巻には10篇が収録。「或る『小倉日記』伝」はこれで4度目になる読書でしたが、今回が一番面白かったかも。というのも宮部さんの解説に、田上耕作の伝記小説の一面もあるという一文を見つけたからです。そういう目で読むと田上の壮絶な人生とあの結末がいっそう胸に響きました。このほか完全犯罪を目論む「一年半待て」「捜査圏外の条件」は、いまも色褪せない極上のミステリーでした。あとの2巻も楽しみです。
2023/02/01
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