いかに木を殺すか (文春文庫 お 1-4)
いかに木を殺すか (文春文庫 お 1-4) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作を含む6つの短篇を収録。いずれも書かれたのは1984年。手法としては「実在の人物をもとにしながら、小説の内在的な力による変形をおこな」ったもの(例えば「メヒコの大抜け穴」等)、あるいは大江自身の幼少期や青年期の体験を再再構築したもの(「いかに木を殺すか」等)。後者では、例えば四国の山中の村にあった「世界舞台」を語るが、その極私的、極地的なものが実は空間的にも時間的にも拡がりを持ち、いわば普遍化されていくところに、こうした語りの意味があったのだろう。ただ、それはきわめて粘着質であり、いささか疲れるが。
2017/07/22
Vakira
この題名から自然破壊への警告を妄想した。しかし、それは8編の短編集で「同時代ゲーム」「「雨の木」を聴く女たち」「新しいよ人眼ざめよ」等の続編の様な物語。てか再利用?しかし、自作への説明ではない。既存の作品から評価された自分とはまた違った物語が展開する。過去に執筆した自作に対しての異議申し立てということになるのだろう。しかもそのタッチは昔のまま、1編に1逸話のグロテスクで変態的&性的な暴力表現が登場する。健さん、読者の反応を楽しんでいるでしょう。では個人的にこの文体命名、セクシャル・パーバート・グロテスク。
2023/03/30
やまねっと
ついうーむと、嘆息をついてしまうほど、難しい小説でした。「罪のゆるし」のあお草は面白く読んだ。やはり光さんのことが出てくると面白いなあと思いました。でも、他は…。 そう書かざるを得ないほど難読な本だった。大江健三郎の本はそういう本が比較的多い気がする。 同時に作者の他の著書を読んでいないと理解し難い描写も多く出てくる。 一つの文も長くて英訳されれば良いのかと思うが、読んでて思考が飛んで何が言いたいのかわからなくなる側面も持っていると文章を読んで思った。 もう少し我慢して大江健三郎を読んでみたいと思う。
2021/02/21
井蛙
大江のいくつかの短編は、彼の長編をより良く理解する一助になる。本作所収の短編は、『同時代ゲーム』において書かれなかったこと、そしてその書かれなかったことが「大いなる女たち」という題の下に構想され、結局はやはり挫折せざるを得なかったことの経緯を巡って執筆されている。そしてその書かれなかったことは他者との批判的対話を通して、あるいは他者による読解と変奏によって新たな生命を吹き込まれ甦るようだ。ところで大江の短編は長編と比していかにも私小説の外観を持っているが、彼が裏話的に暴露する物語においても、虚構と現実の→
2019/08/26
モリータ
◆単行本1984年刊、文春文庫1987年刊。◆単行本読了済。2022/5/6既読本棚へ。
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