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東京セブンローズ 上 (文春文庫 い 3-21)

東京セブンローズ 上 (文春文庫 い 3-21)

東京セブンローズ 上 (文春文庫 い 3-21)

作家
井上ひさし
出版社
文藝春秋
発売日
2002-04-10
ISBN
9784167111212
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東京セブンローズ 上 (文春文庫 い 3-21) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

根津宮永町の團扇屋主人、山中信介の日記という体裁をとる。東京の下町の戦中、戦後の状況を生々しく描き出す工夫だろう。それは第2次大戦末期の1945年4月から始まり、上巻では同年の11月まで記されるが、彼が思想犯として獄中にいたために、7月と8月を欠いている。8月15日の玉音放送をあえて回避したためとも、また戦中と戦後を鮮やかに対比させるためであったとも考えられる。実はそれはある意味では全く同質であったのだが。空襲で長女夫婦等を失ったが、全体としての筆致は井上ひさしらしく洒脱である。

2022/03/29

ちゃま坊

昭和20年というのは日本の歴史の大転換点。どん底のはずだがみんなたくましく生きている。団扇屋のオヤジの日記形式で、東京の庶民の暮らしを描写している。帝釈天あたりで少年車寅次郎らしいのが出てきて笑。6月から9月に日記はいきなり飛ぶが、この空白期間に戦争は終わり世間は変わってしまった。多用されてる旧字体問題。アンドロイドアプリ「手書き漢字認識辞書」で入力しながら読み進む。便利な時代になったものだ。

2020/01/22

とみやん📖

始めは旧仮名遣いや言葉が古く、かつ、物語も平坦なため、挫折しそうになるほど、読むのに時間がかかった。次第にそれにも慣れ、ストーリーが展開し始めると、今度は止まらなくなる。希有な小説だと思う。井上ひさし作品とあって、一人称の日記スタイルなのだか、演劇のような雰囲気がある。 話は戦前戦後の動乱期ゆえ、貧しさや狂乱の中で、救いようのない無様な日本人を史実を巧みに、詳細に織り交ぜながらリアルに描き出す。上巻を読み終えたとき、暗い残像が胸にこびりつき、自ずと溜め息が漏れる。この後、気持ち良く話は展開するのだろうか。

2019/04/11

ネムル

活版は弾に使うからガリ版に、くらいはともかくとしてらっきょう食うと爆弾に当たらなくなる(曰くらっきょうが臭くて弾のほうから逃げるだの、らっきょうと焼夷弾は形が逃げるから爆弾が逃げるだの)とか、深夜に電車で糞尿を運搬する際の運転士は上手い人とか、ルーズベルトからベルトを取ったら弛んじゃったという語呂悪罵とか、どこまでホントかわからない眉唾細部の集積でなかなか楽しい。

2017/12/31

テキィ

前半のねちっこい描写に比べ、後半、特に東京セブンローズ出現からラストまでの描写がとても駆け足で、盛り上がっているだけにもう少し文章を読みたかったなぁと思ったが、これも作劇としては見事なのでいいです。個人的に日本語のローマ字化というテーマを扱った本という視点から読み始めましたが、作家の力量に圧倒され存外に楽しい時間を過ごせました。もちろん、今では読む読む機会もほとんどない、旧仮名使いや当用漢字以前の漢字の文がそのひとつの答えだと思いますが。

2009/10/04

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