新装版 手鎖心中 (文春文庫) (文春文庫 い 3-28)
新装版 手鎖心中 (文春文庫) (文春文庫 い 3-28) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
「手鎖心中」は、第67回(1972年上期)直木賞受賞作。解説の勘三郎さんも指摘しているが、山東京伝の黄表紙『江戸生艶気樺焼』を原典に書かれている。井上ひさしが戯作にもっとも親和性を抱いていた頃の作品だ。本篇も、もちろん徹底した戯作調で書かれている。登場人物同士の会話の呼吸が実に巧み。エンディングの戯作者揃い踏みは、読んでいる方もゾクゾクと武者震いに襲われる。こんな世の中でも、未来は明るいような気がしてくるのは、まさに井上ひさしの真骨頂。併録の「江戸の夕立」は、さりげない表現の中に東北の哀しみを忍ばせる。
2015/03/07
遥かなる想い
第67回(1972年)直木賞。 絵草紙の作者を夢見る 栄次郎を軸に 江戸の戯作者たちの 風景を 軽快な 筆致で描く。 道楽息子 栄次郎と それに群がる ノー天気な男たち…最後のオチも軽妙で、 風刺満載の作品だった。
2018/07/28
kaizen@名古屋de朝活読書会
【直木賞】江戸の絵草紙作家の卵達。作中作品「百々謎化物名鑑(ももなぞばけものめいかん)」、桃太郎が十二人の妖怪変化に出くわし、謎々で家来にして、鬼退治をする。これ、作品として読みたいと思った。まだ出ていないのだろうか。江戸時代を障壁として意識せずに読める江戸物。すごい。
2014/02/15
優希
面白かったです。軽妙なテンポで語られるのみならず、駄洒落や言葉遊びが心地よいリズムを刻んでいるのがいいですね。落語のような時代劇のような雰囲気を感じました。やりきれないような物語も、明るい物語展開で人の愚かさを笑いとばしてくれるようです。戯作者が書いた作品なので、舞台で見たらどのような雰囲気になるのかと想像させられました。
2016/09/29
hit4papa
タイトル作は、絵草紙作者になりたい材木問屋の若旦那が、売れるためにわざわざ身をもちくずしていくというコミカルなお話。まさに、芸のためなら〜♪… な展開です。才能なきものが、才能あるものの破天荒な一面に憧れを持つというのはよくあります。本作品の主人公は、勘当されたり、刑罰(手鎖)を目論んだり、そして果ては心中…と、エスカレートしていくのです。毒のあるラストが印象深いですね。収録作「江戸の夕立ち」は、江戸から岩手へと旅した大店の若旦那と太鼓持ちのお話。しんどい日々が描かれます。こちらもラストは毒々。
2021/01/15
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