無鹿 (文春文庫 え 1-24)
無鹿 (文春文庫 え 1-24) / 感想・レビュー
Willie the Wildcat
歴史上の人物、旧友、あるいは同業者の逸話。どこかスピリチュアルであり夢物語だが、結末が対照的な作品群。『無鹿』と『取材日記』は、夢破れて山河有りという感。一方、『あの世で』と『御飯をたべる会』は、遺された者たちへ・・・という感。著者のちょっとした日常生活に見出す死生観が、少なからず滲む。強いて挙げれば『御飯をたべる会』の〆、「野田のオチ」が微笑ましい分だけ印象的。
2017/10/14
まあこちゃん
尊敬する著者の四篇の短篇集。健康に不安を抱える定年間際の男が、かつて大友宗麟が目指した理想の地を訪れる表題の「無鹿」は、しみじみと切ない余韻が続く。信長や秀吉や蜂須賀小六らの故郷を訪れた時の話が綴られる「取材日記」は、歴史に疎い私にも興味深く、当時の武将達の思いに心を馳せながら読む事が出来た。亡くなった恋人が飛行機事故の身代わりになる「あの世で」は、ゾクッとするストーリーながらも、不思議とあり得るような気がした。人間や物が持つ"気"を題材にした「御飯をたべる会」は、オチが良かった。やはり著者の本は面白い。
2019/08/08
ちばと~る
キリシタン大名 大友宗麟を描いた「王の挽歌」執筆の過程で生まれた短編「無鹿」と取材日記やらエッセイやらの短編集。臨死体験を描いた一編はほんのりホラーでしっとり泣けますな〜。長編で読みたい。遠藤周作作品の戦国モノも読みたくなる短編集でございます。
2016/12/23
koushi
短編物ですが遠藤先生の著作らしく歴史、宗教観、死生観の全てが表されていた一冊でした。本当に色々な物事に興味を持たれた方であると思い尊敬します。遠藤先生の作品の題材は広く深く、考えさせられること数多く我が身を振り返り人生を考える上で大変勉強になります。
2014/10/21
とまと
地元が舞台になっている数少ない文学のうちのひとつ。何もないのやろけど、無鹿に行ってみようか。内容については全然知らなかったのだが、ちょうど西南戦争の本を読んだ後で、松岡正剛の言う読機が来てたのやなと。「西郷隆盛も大友宗麟もそれぞれん夢賭けて、そん夢が破れたのが無鹿。今は何もねえき。北川という川だけが昔んまま流れちょっとですきね」方言については、こんな風に言うかなと思うところもあったけど、20数年で変わってるもかも分からんし、そこは大学で何も勉強してない自分には何とも言えんです。
2013/12/09
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