ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説 (文春文庫) (文春文庫 か 1-12)
ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説 (文春文庫) (文春文庫 か 1-12) / 感想・レビュー
Shoji
作者の嗜好や趣味である、釣りやアヘン、ワインなどを取り上げた短編小説です(アヘンも趣味や嗜好なのかな?)。全篇を通して、退廃さや重苦しさを感じる作品です。私個人としては、『黄昏の力』という作品に惹かれました。昭和の経済成長が著しかった頃の東京湾の汚さ、ドブの臭い、仕事が引けた後に見るブルーフィルムの淫靡な様子が実にリアルに描写されていて、何とも言えぬ情緒を感じました。もちろん、他の作品も良かったです。
2021/08/16
みっぴー
《ナンバーズフェア》第二弾。小説というより体験談と言ったほうがいいかもしれない。阿片の話、釣りの話、料理の話、そして酒の話。舞台は主にアジア。滞在した場所の文化や風俗、現地人とのやりとりの描写が非常に濃密で、体臭が伝わってきそうなレベルです。露骨な表現も多々ありますが、それが不思議と下品には感じないのは、作者の技術力ゆえのものでしょう。『ロマネコンティ1935』がやっぱり一番面白かったです。ワインを疲れきった女性に例える(笑)なるほど。『玉、砕ける』は、怖いけど一回体験してみたい。やっぱり砕けるのかな?
2018/07/27
奥澤啓
現在、新刊としては文庫しかないので元版(1978年刊)の帯文を紹介したい。 「久々の短篇小説集。この作家長年の旅と探求がもたらした深沈たる一滴、また一滴。酒、食、釣り、阿片など快楽の諸相、その豊饒から悲惨まで隈なくきわめつくされた完熟の仕上がり!」 このような戦後の散文表現の達成といっていい名文の数々は、批判や批評を受けつけない。読むだけでなく、ゆったりした気持ちで、原稿用紙に一字一字写して堪能するといいと思う。私にとっての最高の読書は筆写である。読んだ時とは別の発見がかならずある。
2015/03/10
Shun
開高健さんの6つの短編を収録。表題作はお酒をテーマとした作品、その他も釣りや食、そして阿片などをテーマとしている。これらの作品からは著者の飽くなき探求心や、豊富な経験によって得たであろうその道の習熟をうかがい知ることができ、各テーマの作品は新たな世界への入り口のように感じました。酒がテーマである表題作は、高級ワインの代名詞とも言えるロマネ・コンティの年代物を前に男たちの蘊蓄や品評が並び、芳醇なワインの香りや熟成された年月の深みまで味わうような1品。稀少なワインをサーブする給仕の緊張感まで凝った演出が良い。
2021/08/19
かえで
川端康成文学賞を受賞した「玉、砕ける」など、タイトルの通り6つの短編を収録。「これ、小説なんだ?」という感覚を持った。紛れもなく6つとも語り手は開高健自身で、自身の経験や体験から書かれたもの。だけどエッセイとも違うし、やはり小説。解説で、開高氏は掴まえにくい作家だと書いてあったけど、まさにそんな感じ。少し僕には難しく感じられる表現も多かったけど、とても美しい文章が多い。表現ここに極まる、という素晴らしい文章。寡作な人だけど、その作品は濃いものが多い。特に「玉、砕ける」はとても短いけど魅力のある作品だった。
2015/04/05
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