わが人生の時の人々 (文春文庫 い 24-8)
わが人生の時の人々 (文春文庫 い 24-8) / 感想・レビュー
ダイキ
「三島由紀夫氏と川端さんの作品論をしていて、私が川端さんの作品の中ではその頃の時点では〈みづうみ〉が一番好きだといったら三島さんが色をなして怒り出した。〈なにを馬鹿なことをいうんだ、あんな作品は破綻してるじゃないか、あんなどろどろして不明確なもののどこがいいんだ〉(略)私が〈みづうみ〉と言ったら三島さんがひどく怒った、といったら川端さんが小さく声をたてて笑い、〈ああ、あの作品は三島君には駄目でしょうね。あの人には駄目にきまってます〉なぜか突き放すようにいった。」(水上勉を泣かした小林秀雄)
2020/01/21
つちのこ
文庫版新刊で購入。著者の交遊は文学界、スポーツ界、政界、芸能界など多岐にわたる。黒澤明や大江健三郎、佐藤栄作、田中角栄など同時代を生きたビックネームが並び、壮観のひとこと。中でも三島については、“三島由紀夫ほどきらきら光って知的な部門だけではなしにさまざまに興味をそそられた人物はいなかった”と書く。著者をしても三島の孤高の輝きには近寄りがたいものがあったようだ。また、昭和30年代の文壇サロンの象徴に文士劇があり、掲載された写真には東郷青児のような大物画家もいて驚いた。(2005.1記)
2005/01/25
ハムクルーズ
作家、俳優、政治家と多面的、重層的に戦後日本をリーディングした著者の昭和交遊録。その人脈資源、文才に異を唱える人はいないでしょう。個性というか異彩を放つ高度成長期を舞台にした人間模様が何か引きつけて止まない自由闊達な魅力に溢れている。人間のレベルの違いを無意識的に表しているところは天然というか彼の性質としての成り立ちであろう。嫌味な俺様的自慢の列伝とも見紛うがそれが似合うスケールの実質である。
2016/08/27
キャタピラなぎさ
石原慎太郎の交遊録。深沢七郎が文士劇で台詞を噛みまくった話と、左卜全が一つで足りるから、という理由で片目に眼帯をつけていた話が最高。
渋野辺
石原氏の青春が、社会の成熟を背景としていたが故に平成生まれとしては「マッチョ」さを感じざるを得ず、であるがゆえに様々なそのシワ寄せもまたひしひしと感じられる。内容としてははやり文壇や政界の挿話が一層楽しく読めた。小林秀雄の逸話や岸、佐藤兄弟など。文章の端々に彼の満ち満ちた自信ないし青春への絶対的な自信を受け取った。 この時代には「マッチョ」が敬遠され、氏でなくとも小林秀雄あるいは福田恆存のような存在が居ないということに改めて口惜しい気分にさせられた。
2015/04/25
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