思考のレッスン (文春文庫 ま 2-16)
思考のレッスン (文春文庫 ま 2-16) / 感想・レビュー
井月 奎(いづき けい)
丸谷才一は手練れの水先案内人なのですね。線香の煙すらゆらりともしない凪の海から出発して、いろいろの説明をまさに名人芸の話術でしてくれる。ふむふむ、わはは、と聞いているうちに船は沖にでて、波も高くなっているのですが、それは名人、気付かせないでずんずん進みます。読み疲れて一息つくときに、参考している本が普段手にとるのも怖気づくような本で、波高く、岸遠く沖にいることを知ります。それでも甲板の上は静かでして、丸谷才一の力量と思惑に驚いて感服させられます。思考は人の、人にしかできない最高の遊びなのかもしれません。
2015/11/07
りえこ
とてもわかりやすく面白かったです。知らない事や気付いていなかった事がたくさん書いてありました。日本は本を読んではいけないという文化だったなんて、想像もしていませんでした。たくさん読書して、思考していきたいです。
2017/09/25
チェ・ブンブン
今の若者は本を読まないと言っているが、昔は変な思想を入れないよう読書を禁じていたという項目。海外小説は訳者を変えて読めなど知識を入れたい人に目からウロコな本。それにしても、筆者の本を分解して読むスタイルは真似できないわw
2014/04/07
ももたろう
衝撃的だったのは「現代日本文明は、レトリックを捨てた文明だ」という吉田秀和さんの言葉。例えば現代の白玉クリームあんみつは、昔ならば「夏の月」という比喩的な言葉で表していたという例から「現代は散文的な写実性で説明する時代」という思考を展開していたのは大いに学びになった。「分かりやすさ」が重視され、「比喩」や「言葉の奥にある深み」などがどんどん失われているのが現代だと思う。文学や詩が敬遠されるのはこのためだろう→
2016/04/06
呼戯人
丸谷才一と言う人は、文章の名人なのだけれど、文章の名人ということは思考の名人でもあったのかということの確認ができる本です。この人のように深く広く本を読み、その話題の広さ、思考の幅、表現の巧みさに恐れ入るにはこの本を読むに限ります。戦争の時代の嫌な感じ、日本の小説の嫌がらせのような感じに反発を覚えて、英文学やその他外国の文学にのめり込んでゆく様子が書かれていて、今の私たちが嫌な時代を迎えてその自己嫌悪に似た嫌な感じをどう乗り越えてゆくのかという大問題を論じていて面白かった。
2016/03/27
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