湘南: 海光る窓 (文春文庫 し 2-22)
湘南: 海光る窓 (文春文庫 し 2-22) / 感想・レビュー
シュラフ
城山三郎さんがお住まいの湘南にちなんで書いたエッセイ集。湘南に住んでいる人であれば関心もあるのだろうが、正直 自分にはとても退屈な話ばかりであった。ふつう エッセイを通じてその作家の人生観、思想、矜持、生きざま、などが浮き彫りになってくるものだが、このエッセイにはそれらがまったくないのが不思議である。読んでみて気づくのだが、城山三郎さん自身は同窓会を途中で退席してホテルに戻って小説を書く、といった淡泊な人物のように見受けられる。そういえば城山三郎さんの作品の登場人物も淡泊な描写が多い。
2014/06/14
筑紫の國造
「海の見える家に住みたい」と湘南に移住した城山三郎。「月洋亭」と名付けた仕事場から、海を眺め、湘南に関すること、思い出、会った人々について思い出すままに書き綴る。海と空と温暖な気候のせいか、エッセイ全体もなんだか柔らかく、ゆったりした印象を受ける。本人が言うように、この場所に住むと人間の角がとれ、あくせくと生きる人生から解放されるようだ。読む方も、リラックスしてのんびりと読むのがいいだろう。湘南の美しい風景を思い浮かべながら、ああ、ぼくもいつか海の見える家でゆっくり読書にひたりたいなあ、と思った。
2016/11/23
マシンガン
夏休みの一服に相応しい、城山三郎のエッセイ集。都心に出かけていった時のことや旅行の話もあるが、やはり自分の住んでいる茅ヶ崎周辺の話題が多い。そういう土地の、時季折々の事柄が述べられているのだから、「湘南」のタイトルは相応しいのだろう。そして、1989年の単行本刊行ということから、当時からこれまでの、時節や環境の変遷も理解り感慨深い。結局変わらないのは、烏帽子岩のシルエットと、穏やかな海の海面の煌めきだけなのか。
2013/08/11
アルパカくん
著者がどういったきっかけで湘南に住まいを移すことになったのか、などが描かれていました。ツアー旅行について「人生と同じで苦労がなければ満足もいまひとつ」であるとか、同窓会へ行くつもりが会場を誤って記憶し結局たどり着けなかったもののその土地の新聞配達員の若者に親切にしてもらったため、失敗してよかった、とそのことを振り返るなど、ちょっとした「なるほど」がちりばめられている良書でした。気楽に読むエッセイ集。
2015/06/28
北之庄
名古屋生まれ一橋大卒で、ビジネスやら歴史に関する硬派の作品を数多く生み出した著者と、サザンやらTUBEに代表される軟派なイメージで定評のある(失礼)湘南が全く結び付きませんでした。風光明媚かつ温暖な彼の地が、彼のお気に入りの棲み家だったとは極めて意外。当初抱いたその印象が余りにも強く、また自分自身が東京在勤時に約10年間居住した、我が愛しの下総佐倉から相模国は遥かなる地であった為、やっかみ半分持ちつつもエセーの内容は余り心に響いてきませんでした…残念。従ってこのジャンルは、同年輩の吉村昭氏に軍配です。
2015/09/12
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