新装版 光と影 (文春文庫) (文春文庫 わ 1-26)
新装版 光と影 (文春文庫) (文春文庫 わ 1-26) / 感想・レビュー
遥かなる想い
渡辺淳一の直木賞受賞作。カルテの順序というささいな偶然がその後の人生を分けた二人の生き様を 描く。時代は西南戦争で、著者の医学の知識が垣間見れて面白い。「寺内正毅」という歴史に名を残す光とは対照的に、小武(おぶ)という影の人物造形が見事で、物語に緊迫感を与えている。虚実からませながら、昔の渡辺淳一はこんな本を書いていたのかという驚きもあって一気に読んだ。昭和45年の作品である。
2013/06/22
kaizen@名古屋de朝活読書会
直木賞】西郷隆盛との西南戦争で腕を負傷した2人。大阪の病院で一人は切断、一人は治療。運命が光と影に。腕が残った方は軍隊に復帰し大臣に。腕をなくした方は軍隊の倶楽部の事務長に。結婚して子供ができたので影ではないと思う。医療に関する短編集。「宣告」は芸術家に癌の宣告。「猿の抵抗」医療実験への抵抗。「薔薇連想」は梅毒の症状に薔薇の文字。
2014/07/31
matsu04
「かつてあいつは俺より劣っていた」…全身が鳥肌だった初読み時の感覚が甦った表題作。これは果たして史実なんだろうかと歴史資料を紐解いてみたものだった。数十年ぶりの再読だった今回も、やはり唸らされてしまった。渡辺淳一がただのエロじじいではなかったことを思い知らされる一冊。
2016/05/15
空猫
【第63回直木賞】ずっと同じ様な境遇で同じ道を歩いてきた男二人が医者の気まぐれな出来事から上りと下り坂を行かされる『光と影』でもなーそれも「人となり」かもなー。自らの死を受け入れるとはやはり難しいのか…二つとも署名がない…『宣告』。貧乏人いや猿にも矜持はあるのだ『猿の抵抗』。昔 梅毒、今 エイズ 血を通して人から人へ『薔薇連想』。元医師ならではのリアリティと、何より文章が素晴らしく、久々にのめり込んで読んだ。著者の官能以外の作品があるなら読んでみたい(『花埋ずみ』とか?)
2021/11/16
hit4papa
西南戦争で銃創を負い戦線を離脱した二人の同期の陸軍兵士。執刀医の気まぐれともいえる判断で一人は腕を切断し、一人は腕を残されます。腕を残された方は後の内閣総理大臣 寺内正毅。輝かしい道を歩み続けます。そして、もう一人は ・・・本作品は、男のジェラシーが丹念に描かれていますが、このあたりのえぐり方は、後の大恋愛小説家としての萌芽が見られますね。比較的短い頁数のわりに、著者の医師としての視線を巧みに取り入れた、密度の濃い作品です。
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