赤い月(上) (文春文庫 な 25-4)
赤い月(上) (文春文庫 な 25-4) / 感想・レビュー
yoshida
なかにし礼さんが体験をもとに描く。昭和9年に満州で酒造業「森田酒造」を始めた森田勇太郎と妻の波子。関東軍の酒保の地位を約束された「森田酒造」は成功。多大な財を成す森田家だが昭和20年8月9日のソ連侵攻により全てを喪い日本への引き揚げが始まる。本作では満州国の勃興から成長も描かれており面白い。関東軍や満州への日本国内の空気感等は賛否ある。満州国は結局は日本の軍事基地で危険であるという声。日本を出て大陸で一旗上げようとする声。リスクをとらねばリターンはない。だが満州国の歴史を知る私達は、読んでいて辛くなる。
2017/07/28
みつき
牡丹江生まれのなかにし礼の自伝的小説。1945年8月9日からの満州での地獄の日々。波子が愛する子供達のため、ロシア兵や中国人の脅威に晒されながら必死に逃げ、生き抜こうとするその強さに魅せられページをめくることを止められませんでした。母の底知れぬ強さをひしひし感じました。元々小樽にいた彼女がなぜ満州に渡ることになったかを描いた後半は「元来、女性は太陽である」このらいてうの言葉をモットーにしていた新しい女の姿を瑞々しく描いており、また違った面白さを味わえました。久々のヒット作品に出会えて嬉しいです。
2014/01/11
びぃごろ
自国の領土を広げる為に、侵略が当然とする日本。恐ろし・・・満州へ希望を持って旅立つ夫婦と、敗戦により追われる迄が描かれた上巻。ほんの少し前の話なんだよね・・・
2013/11/28
三平
激動の満州国を舞台に、たくましく、自分らしく生きた一人の女性の姿を描いている。実は著者の母がモデルらしい。 様々な民族の思惑が入り交じる満州の内実、その汚濁も呑み込んで生きていく人々。その当時の熱が伝わってくる。 頁を読み進める手が止まらない。下巻も楽しみ。
2018/12/12
mimichichi
終戦、満州からの引き上げを自身の体験をもとに描く。後半は、日本から満州へ渡った経緯、満州の発展経過が描かれる。どう見ても侵略だが、当時の国民感情としては、世界恐慌を脱する道として受け入れられていた。葛藤しつつも、生きるための道を選んだ人達がいたのがわかった。時代の流れは恐ろしい。
2016/07/16
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