ヘル (文春文庫 つ 1-14)
ヘル (文春文庫 つ 1-14) / 感想・レビュー
優希
何だか混沌としていました。時間と人物が錯綜し、ごちゃごちゃとしているけれど、この破綻した世界がヘルなんですね。生と死、現実と地獄が曖昧になっていて、ここまで狂気を虚構を言語化できるのが筒井サンの凄いところだなと思わずにはいられません。後半の小気味良いリズムに乗って話が進むのが楽しかったです。意味はイマイチ分からなかったけれど、それなりに面白く読みました。
2015/10/27
ねりわさび
30人の登場人物が僅か200ページの枠内で十重二十重に踊るがごとく躍動しながら死後の領域である不条理世界に惑乱されていく小説。舞台設定がわかりにくいのですが台詞回しが五七調に仕立てられており読みやすい。結局ヘルの正体がわからないままクローズするのでSF的な作品と言えるのかもしれません。お勧めは巻末にある、表紙を描いた横尾忠則氏との対談。大変興味深く読めました
2021/01/11
GaGa
筒井康隆の未読本を古本屋で、しかも文庫で発見すると言うのは、自分も年をとったなとつくづく思う(若い頃は単行本が出た途端買っていた)また、面倒の事を始めたのかと思いきや、この作品は筒井SFの原点回帰ともいえるもので大いに楽しめた。どことなく懐かしさすら漂うスラップスティック。今でいうとこの短さが逆にいい。傑作!
2012/08/23
チャーミー
ヘルと現世がごっちゃ混ぜになり変な脳内分泌物が溢れでそうになった。ここは死する人々の極楽浄土なのか。現実が地獄でヘルこそが中心に世界は廻っているんではないか。後半の五七調の文体ではグイグイとグルーヴを生み出しその世界を「ヘル」へと昇華していった。
2019/04/23
TSUBASA
死んだ者が生きる「ヘル」。やくざであったが刺されて殺された勇三、勇三に幼い頃足を折られてその後中年になって交通事故で死んだ武、武に妻を寝取られ出張途中に航空機事故で死んだ泉などなどがヘルへ落ちる。殺し殺されの恨みつらみも無感覚になるこのヘルで彼らはどこへ向かうのか。生と死の境界を曖昧にし、さらには夢を媒介に現実と地獄との境界も曖昧にしてしまう。後半は加えて七五調で狂気にのめり込ませてしまう。こういう狂気と虚構を巧みに展開できる作家って筒井御大をおいて他にいないんじゃなかろうか。付録のインタビューも面白い。
2014/09/07
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