蘇我入鹿 落日の王子(下) (文春文庫 く 1-20)
蘇我入鹿 落日の王子(下) (文春文庫 く 1-20) / 感想・レビュー
future4227
乙巳の変は歴史の教科書で学ぶような蝦夷、入鹿父子VS中大兄皇子、鎌足という単純な対立構造ではなく、蘇我氏内部の本宗家VS分家の対立、次期大王を狙う皇子間の対立などが複雑に絡まり合って起きた出来事ということがわかる。日本書紀は勝者によって都合よく書かれたものという前提で、記述内容の矛盾や不自然な所はきっぱりと創作であると断じる黒岩氏の自信がすごい。半分は小説、半分は研究私見が綴られた作品でエンターテイメント性が少ない。同じような内容が何度も繰り返されるしつこさが、軽快なテンポを損なってしまっていて残念。
2018/12/02
しんすけ
入鹿と鎌足の性格の違いが乙巳の変の運命を決めたと云っても良いだろう。 どちらも学問を好み政治的行動を巧みにするが、入鹿には鎌足にあった陰謀的性格が欠けていた。それも陰湿とも粘質とも表現できる性格である。 独裁を考える入鹿が鎌足らによって殺され天皇家の地盤が固まり始めるのだが、それが良かったとは一概には言えない。鎌足の援助を受けた中大兄も、聖徳太子が目指した人類平等の世界を目指すような志を持った人物ではなかった。
2020/03/09
まみこ
黒岩重吾氏の古代小説は、毎回若干冗長な印象は受けますが、私はどうしようもなく氏の小説に惹きつけられます。今回、目が離せなかったのは藤原鎌足。直情型の入鹿とは対照的に、非常に用心深く権謀術数に長けた人物として書かれてますが、私はいつもそういう人物に惹かれる傾向ありです( ̄▽ ̄;)これから連綿と続く藤原氏の権力の足掛かりを作った人物。周囲の人物関係を冷徹な目で眺めながら、権力を手にする機会を窺う姿に痺れました。藤原氏のお家芸?とも言われる他氏排斥の兆しが既に鎌足にビリビリ感じました!
2023/08/02
浦
下巻になると、好きにはなれないものの入鹿の美意識が理解できてきた。僕には主人公の暴力的な姿は許せないが、憧れる人もいるだろう。身近な存在なら、そういう人はいつか敵になるかもしれない。何人か、読ませてみたい人が頭に浮かんだ。大化の改新其の日の描写の緊張感は凄まじく、この技術をもつ作家さんはそうは居ない。
2017/09/06
だまし売りNo
よくもっと直接会って話し合えば良いのにという無責任な意見が出ることがある。しかし、それは昭和的な対面コミュニケーション至上主義に捉われている。むしろ現実は「会ったことによって事態は益々悪くなる」(188頁)。
2021/08/16
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