地の果ての獄 上 (文春文庫 183-6)
地の果ての獄 上 (文春文庫 183-6) / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
明治19年神戸から北海道に向かう石狩丸の中で樺戸集治監に看守として赴任する22才の有馬四郎助は、船上の囚人達の暴動で、元南町奉行所与力という意外な過去を持つ監獄教誨師・原胤昭と知り合う。北海道の電信局に行く途中の幸田露伴から「人間の運命の吹きだまり」と言われた集治監には山県内務郷が金子太政官大書記官に訓示した内容「重罪人のために国費をつかうのはもったいないから、重労働につかせて殺せば、支出が減っていい。」を忠実に守るサディストの看守長・騎西銅十郎、ドクトル・ヘボンの弟子である酔いどれ医師・独休庵がいた。
2003/09/25
出世八五郎
巷間、「罪を憎んで人を憎まず」という言葉があるが、日露戦争で活躍した金子堅太郎や山県有朋の囚人に対する認識の文書から、この作品では「罪を憎んで人を憎む」となるか、北海道開拓裏面史を描いた本書ではそうなる。薩摩人看守が現場で体験したことを描き出す。大久しぶりの山田風太郎作品は読み進めるのが勿体ないと思った。
2020/06/07
さっと
のちの愛の典獄、若き日の有馬四郎助が看守として赴任した「地の果ての獄」樺戸集治監が舞台。司馬遼太郎のいうところの童話的な開拓使政策から一転、賃金は安くすむ、死んでも予算が浮くとした囚人主体の北海道開拓の裏面史がこれ。そして、この主人公からして旧姓は益満、維新の英雄・大西郷のかげとなって幕末江戸で暗躍し鳥羽伏見の戊辰戦争のきっかけをつくりながら、江戸開城後の上野のどさくさで死んだとされる益満休之助はその一族で、薩閥ラインに乗らない若者の目をとおして、看守・囚人双方の壮絶な人間模様が展開される。
2018/09/28
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