明治バベルの塔: 万朝報暗号戦 (文春文庫 や 6-14)
明治バベルの塔: 万朝報暗号戦 (文春文庫 や 6-14) / 感想・レビュー
緋莢
明治25年に黒岩涙香が発行した新聞「万朝報」。朝日、読売を追い抜き、八万部という日本一の部数に達していたが、強力なライバルが現れた。それは「二六新報」という新聞で、万朝報の一銭という値段に対し、二厘という定価。さらに抽選で景品がつくという販売方法まで始めた。それに対抗するために、万朝報では懸賞金つきの暗号を掲載して・・・表題作ほか、明治物三篇を収録した短篇集。
2017/03/05
gollum
おもしろかった。実在の人物が次々に登場するが、安直なトンデモ・ストーリーではなく、あの人ならこんなことしたかも、と思わせ、格調高い漢籍風の文体が「明治」なところが楽しいエンタメに仕上がっている。推しは「いろは大王の火葬場」。数十人のお妾さんをひとりずつ牛鍋チェーン店店長にしていく実在の人物・木村荘平の強烈な魅力と彼が始めた新式火葬場の火葬第一号に狙われ、次々と登場する明治の有名人たちのエピソードがおもしろい。大好きな、小泉節子さんの「思ひ出の記」のハーンの遺言が、大量引用されてたのがうれしい。
2013/02/16
satoshi
「万朝報」の主幹黒岩涙香が読者獲得のために仕掛けた暗号クイズ。同新聞で筆をふるう幸徳秋水はその暗号を逆手にとってさらなる仕掛けを施す。幸徳秋水のトリックスター的な活躍がとてもおもしろい。短いけれど、山田風太郎の天才が全編にわたって発揮された傑作。
2009/06/30
さっと
明治モノ4編収録。表題作は万朝報がしかけた懸賞問題(暗号文)が実は二重の意味をもっていて、そのトリック(アナグラム)に感心する。そのほか、夏目漱石の文体模写で、日清講和で来日中の李鴻章を狙撃した小山豊太郎の獄中生活を描いた「牢獄の坊ちゃん」、牛鍋チェーン店「いろは」を展開する木村荘平の火葬事業で部下が火葬第一号となる著名人あつめに四苦八苦する「いろは大王の火葬場」、幸徳秋水の人物像を4つの面から腑分けする試み「四分割秋水伝」。「いろは大王~」のラストは鮮烈。皮肉な結末というか人間社会、案外こんな感じか。
2018/10/31
makka
「いろは大王」木村荘平に岩崎弥太郎をさらに豪快にしたイメージを持った。明治のころには彼らのような「どてらい男」がキラ星のごとく溢れていたのだろう。李鴻章を狙撃した男、小山豊太郎を「坊ちゃん」文体に仕立て、黒岩涙香と幸徳秋水の落ち話をアナグラムを使って遊んで、秋水を狂わせた女、管野須賀子を視点を変えながら見事に描く、それぞれ違った手法で書かれた4篇。面白い!!!
2013/08/08
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