紐育マサオ (文春文庫 う 7-2)
紐育マサオ (文春文庫 う 7-2) / 感想・レビュー
yukalalami
テレビでアシスタントをするかほるは、ヘアメイクアーティストのマサオと知り合う。ほどなく世界の名だたる人々をも魅了する売れっ子となり連絡は滞りがちになるが、不治の病に侵された時頼れるのはかほるだけだった。印象的だったのは自由を求めてニューヨークに行ったが人種やゲイで偏見を受けたと告白するところ。まばゆいほどの才能に恵まれたマサオも挫折を味わっており夢半ばで燃え尽きる姿は胸が痛い。明と暗、生と死の描き方が見事だった。実在の人物の物語と言われておりどうしても書きたかったという宮土理さんの情熱が伝わってきた。
2017/05/31
きつね
佐藤愛子解説:「夏の早朝だった。ベルの音に反射的にベッドの脇にある受話器を取り、耳に当てたのは、生放送の番組を抱えるタレントの一種職業病ともいえる」/「紐育マサオ」の書き出しである。この書き出しは実にいい。この僅かな行数で、「私」なる女性の(まだスターになっていない、そこそこのタレントだという)輪郭が浮かぶ。スターならば、「反射的」に受話器を取ったりしないであろう。「反射的に取った」という一言で、その時の「私」のありようがわかるのである。
2017/01/11
UBA
初めて読んだのは20代の頃、以来、今も大切にしています。うつみ宮土理さんがこんなに活き活きとした文章を書くことに驚かされましたが、AIDSを題材にされていること、実在した方がモデルであることにも衝撃を受けた作品です。当時は「AIDS」という病気がわかってなかったんですよね。今もわかっているなどとは言いませんが・・・、世間的にもいまだ理解されにくい病気のひとつではないでしょうか。AIDSやHIV感染者への偏見が無くなるとは思えませんが、自分がこの本を読んだ時に感じた心の痛みだけは忘れずにいようと思います。
感想・レビューをもっと見る