暗殺の年輪 (文春文庫)
暗殺の年輪 (文春文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
【海坂藩城下町 第9回読書の集い「冬」】わたしとしたことが!直木賞受賞作をここまで積んでいたなんて。相変わらずの繊細な設定・人物描写。読者を見てきたかのように引き込んでくれるのがうれしい。ここからはちと辛口。どう読んでも、女性の心をまるでわかっていらっしゃらないような描写あり。当時、時代小説を買って読むのは男性が大半だろうから女性読者は眼中になかった、というところか。初期作品は肌に合いづらい、ということを再確認。
2023/12/28
ヴェネツィア
直木賞受賞の表題作をはじめ、5つの短篇を収録。「暗殺の年輪」も悪くはないが、やはり篇中の白眉は「ただ一撃」だろう。武骨で巨漢の猪十郎の存在感も十分だし、なによりこれに対する、隠居の身の範兵衛が兵法者として復活してゆく姿と、一瞬の立ち合いは読みごたえがある。物語の主軸を支えるのはこの二人だが、実は真に藤沢周平らしさが出ているのは刈谷家の嫁、三緒の造形だ。つつましく、いじらしく、聡明でもあり、さらには感情も溢れるほどに豊かだ。剣豪小説のように見えながら、彼女の存在こそが作品にふくらみと陰翳とを与えているのだ。
2013/05/12
さつき
短編集。どの作品も不本意な状況に身を置く人々が描かれていて、その苛立ち、焦燥感、満たされぬ思いに胸が突かれます。また恋とは本来後ろめたいもの、人目を憚りながらするもの。やむに止まれぬ思いを押さえきれず押し流されるものであることを思い出させられました。藤沢作品の人情味溢れる物も好きですが、このピリリと辛い読み口も心に沁みます。
2021/01/11
ポチ
藤沢さんの直木賞受賞作品と初期の作品。全体に暗く緊張感が漂うが、人の機微に触れた作りは流石だと思いました。それにしても女性達が哀しい…。
2017/11/18
ちゃいろ子
どの作品も心に残る。初期の作品群ということで暗い話ばかりなのもまた良い。解説を読むと殆どの作品が直木賞候補。すごい。 受賞した表題作もそうだが、彫師伊之助を思わせる囮や、元岡っ引の話の黒い縄、ただ一撃のラストも衝撃的だ。そして北斎を描いた溟い海を読み、改めて広重を描いた旅の誘いも読み返してみた。初読みの時より楽しめた。また解説にある溟い海の素晴らしい点を踏まえて更にもう一度読む。あー、私ってこの素晴らしさの半分も理解してなかったーとちょっと落ち込む(涙)
2021/05/04
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