闇の傀儡師 (カイライシ) (上) (文春文庫)
闇の傀儡師 (カイライシ) (上) (文春文庫) / 感想・レビュー
AICHAN
「版下」という言葉が出てくる。印刷前のデータのことだ。江戸時代の版下は手書きだった。それを元に木版にした。今の印刷ではそのデータはパソコンで作られフィルムにまでなる。20年くらい前までは「版下」は手作りだった。手書きの原稿を写真植字器で打って印画紙に焼き、写真は網掛けして紙焼きにし、図は手描きし、それらを切り貼りして「版下」を作った。カラー印刷では色ごとにフィルムを別々に作り重ね刷りした。その手法は江戸時代と基本的には同じ。錦絵などはそうしてできた。今は1台の印刷機が重ね刷りを一気にやる。呆気ない。
2016/03/09
icchiy
読み損じていたこの「闇の傀儡師」、やっぱり面白いです。 なんともスリリングでミステリアスな雰囲気抜群。徳川将軍家を大昔から嫌う謎の集団とそれに対抗する集団、主人公の源次郎はそのふたつの争いに巻き込まれていく。。。下巻へ♪
2018/07/29
AICHAN
「筆耕」という職業が出てくる。DTPが普及したので今はもうないかもしれないが写植に近いだろう。藤沢さんの時代ものを読んでいると当時の仕事がいろいろと出てきて面白い。欲を言えば、髪結い(床屋)などについても描いてほしかった。厠や湯屋についても。何日おきぐらいに月代を剃り髪結いをしたのか、厠はどんなふうで何で拭いていたのか、湯屋はどんなふうだったのとか…等々。江戸時代の風俗を知りたくてその種の本を読んだことがあるが、それには“ナンバ走り”のことは書かれていたが髪結いや厠や湯屋についての記述はなかった。
2015/12/12
AICHAN
幕府隠密の姿を見事に描いている。隠密は外交で使えばスパイのようなものだが、幕府はそれを国内統治のために使った。徳川幕府が絶対権力を持たなかったせいだ。幕府は諸藩の主君ではなく盟主のような存在で、だから例えば諸藩の江戸藩邸は治外法権だった。幕府にとって諸藩は外国のような存在だったのだ。そのため幕府は諸藩の主君の妻子を江戸に軟禁し、諸藩の武力を削り、何か粗はないかと諸藩の様子を探り、粗があればすぐ糾弾して取り潰すなどの措置をした。隠密はそういう面で活躍した。哀しい運命を背負った者たちだったのだ。
2015/11/23
AICHAN
主人公とその祖師が剣の修行のため山に籠る。昔の武術家の多くは山籠もりした。動物的感覚を研ぎすます目的で山籠もりしたのだと思う。山籠もりした目的はそれぞれ違うだろうが、動物的感覚などが身に付いたのは同じではなかったか。昔は夜になれば真の闇だし危険と隣り合わせだった。それだけで昔の人々は鋭い感覚を持っていたと思うが、武術家は山籠もりすることでその感覚をさらに磨いたのだろう。また昔は老齢なのに精妙なワザを使う武術家がたくさんいた。それも山籠もりのような修行でなければ身に付けられないもののように思う。
2015/11/11
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