風の果て (下) (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-21)
風の果て (下) (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-21) / 感想・レビュー
ミカママ
イベント【海坂藩城下町 第3回読書の集い「冬」】参加作品。道場の同期門下生5人の青春及び立志伝なのだろうが、ちょっとしたきっかけが5人の人生を変えていく。5人の明暗を分けたものはなんだったんだろう。一気に読まされた名作。わたし自身は作中の「ふき」になりきって読んでいたので、又左衛門との絡みをもっと読みたかったな。https://bookmeter.com/events/4809
2017/12/27
yoshida
下士の部屋住みであった隼太は立身する。桑山家に婿入りし家督を継ぎ、政争を切り抜け、遂には主席家老となる。その果てに待っていたかつての道場仲間との果し合い。実に深い作品だと思う。立身した権力の旨味と驕り、多面的に判断せねばならない政局、清濁併せ呑む必要等、それぞれの人生における悩みや歓びがある。最後の庄六との会話で、人生は立身でも零落でもなく、生業に矜持を持ち自身が胸を張り生きていくことが真の意味での「生きる」意味ではないかと感じた。時代は変われど、現代も通じる内容。円熟期にある藤沢周平さんの名作に逢った。
2018/02/24
nakanaka
深い話でした。権力を持つことは魅力的なことではありますがその反面権力へすがる余り大事なものを失ってしまうものなのでしょうね。そんな中農民や下級武士の気持ちも理解し、また派閥に属さず藩のことだけを考える主人公・又左衛門の人柄が魅力的でした。筆頭家老と普請方という圧倒的な格差がついた又左衛門と庄六の最後の会話が印象的でした。人それぞれ立場や職業が違えどみんないろんな悩みや葛藤がありながらも必死で生きているんだなとしみじみと感じました。個人的には市之丞の不器用な性格は嫌いではありませんでした。面白かったです。
2016/09/15
タツ フカガワ
不毛の大地“太蔵が原”の開墾に成功した又左衛門は中老に任ぜられ執政府入りを果たす。このときの主席家老はかつての道場仲間だった杉山忠兵衛だが、やがて二人が交える政争はまるで剣戟を見るような迫力で、これが本作のクライマックスか、面白い。昔の剣術仲間四人のうち二人が剣に倒れ、一人が政争に敗れ去ったなか、又左衛門は自分も権勢欲に酔った一人だと述懐、すべてが終わったあと、禄二十石の普請組の家に養子に入った庄六と会う場面は、どちらの人生が幸せだったのかと問いかけるようなラストで余韻豊か。名作です。
2024/02/09
とも
★★★★単に時代小説、と読むには惜しすぎる。一つ言えるとすれば、ヒトが組織に属する限り、ヒエラルキーが存在する。その位置=地位により、ヒトの所作は好むと好まざるとを関わらず変わらざるをえない。人生は個人にとってはただ一回のものであり、決して小さなことではない。そこで上を目指せばもちろん得ることもある。が、その反面 失うものもある。当作は、幸福にも下級から筆頭家老まで成り上がった一人の武士の物語であるが、サラリーマンの物語として読んで見てもなかなかに切なく、いつの時代であれば生きていくのは大変だと(笑)
2016/11/23
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