秘太刀馬の骨 (文春文庫 ふ 1-30)
秘太刀馬の骨 (文春文庫 ふ 1-30) / 感想・レビュー
yoshida
政変で家老暗殺に使われた秘剣「馬の骨」。政変で権力を握った小出家老。小出派に属する浅沼半十郎は小出の甥・石橋銀次郎と、「馬の骨」を伝授された者を探す命を受ける。「馬の骨」の使い手であった矢野道場不伝流の高弟五人との接触を始めるうちに、藩の秘事に繋がる二人。藤沢周平さんの作品に登場する人物は実に人間味がある。登場人物それぞれに秘事があり、鬱屈した思いがあり、乗り越えたい壁がある。その人物それぞれの思いが現在にも通じ魅力となっていると思う。本作では最後に半十郎の妻が過去を乗り越える。その姿が実に清々しいのだ。
2017/12/09
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️本年1冊目は藤沢先生でした。藤沢さんは5冊目でまだ初心者レベルです。花のほころび加減、残雪、風の冷たさ暖かさ、日暮れどきの人通りの多さ少なさ、そして1日の中での陽射しの移り変わり、情景が絵のように頭に浮かんでは臨場感を高めていき、どの季節の何時頃であるかが偶然ではなく必然的なものである様にすら感じられました。江戸時代のサラリーマンとも言える登場人物達が奥方や子供、親戚や上司、藩の派閥に翻弄されつつ信念に基づき折り合いをつけて生きて行く様は我々と全く同じ悩みを抱えていた事に気付かされます。
2016/01/03
ケンイチミズバ
秘伝だけに自らを継承者だと口にする者は一人もいない。ならば立ち合いその技を探るしかない。そこにストーリーの面白さがある。なぜなら、おいそれと技を使うはずもなく、それ以前に試合を受けるはずもない。どうすれば相手が試合を受けるか。弱みを握るしかない。家老命で理由もよくわからぬまま秘太刀の使い手を探し出すことが藩の派閥闘争と関わるのか、末端の二人は政争の具なのか。大局の流れの中で自問しては考え、それぞれの立場が定まって行きます。しかしながら主人公にいたっては最後まで一度も刀を抜くことがなく。なんともおもしろい。
2022/04/15
じいじ
【海坂藩城下町 第5回読書の集い「冬」】参加の初読みは、藤沢周平の隠れた傑作と言われる連作長編の本作を選んだ。北国の小藩内の権力争いを主軸に、影をひそめる幻の必殺剣法〈馬の骨〉の継承者を探索するミステリー仕立ての時代小説。前段は静かな立ち上がり、面白さは中盤から…。果し合い、暗殺の噂あり、そして主人公の青年武士が「おまえさまも女子(オナゴ)の気持にとんとうといお人ですなあ」と、愛妻からきつい苦言を呈されます。夫婦の機微が巧妙に描かれて佳境に、俄然面白くなります。藤沢小説の持ち味がじっくり味わえる良作です。
2020/01/05
ヴェネツィア
根強い人気の藤沢周平だが、読むのはこの作品が初めて。古書店で見つけて試しに読んでみることに。最初に読むものとしては、この作者の本流からは外れているようにも思うが、じんわりとした感動の伝わってくる作品だった。秘太刀「馬の骨」をめぐる謎解きといった構成がプロットを引っ張っていくあたりは、他の時代小説と変わらない(あまり読んだことはないのだが)ようだが、終章にいたって、これが藤沢作品なのだなと思わせ、納得させられるものがあった。
2012/03/06
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