早春 その他 (文春文庫 ふ 1-35)
早春 その他 (文春文庫 ふ 1-35) / 感想・レビュー
s-kozy
時代小説二編になんと現代小説一編、それとエッセイが四編という変わった構成の1冊。現代小説もさすがのクオリティで日の当たらない中高年の寂寥を描かせたら右に出る者はいないね。エッセイでも作家として創作の際に気をつけていることや司馬遼太郎との邂逅などが描かれ、非常にお得感ありの1冊。
2016/10/20
レモングラス
ジャーナリストの近藤勝重さんが著書の中で、藤沢周平作品唯一の現代もの「早春」にふれていたので読む。退職間近、出世コースから外れている岡村は妻に先立たれ、息子は入婿状態、娘も妻子ある男性と家を出ようとしている。白蟻に喰われた補修工事の後は手入れを怠ったままのくたびれた家はまだローンが残っている。家族のための家だったが、家はお役ご免になろうとしている。行きつけのバーのママとの再婚を娘に勧められる。そのママの性格も店で見るものとは違っていることを知る。娘への想い、寂寥感の描写が素晴らしい。他、短編2篇と随想。
2023/05/16
優希
時代小説は勿論のこと、現代ものや随想が治められていました。どの作品も味わいがあり、藤沢さんにますます魅了されます。
2023/02/06
マリリン
短編3作と随想等。全ての作品に感じたのは雪に埋もれた南天の隙間から春の気配を感じるが如く深い心情描写が魅力的。特に気に入ったのは、捻くれた感がある斎部五郎助が菊を守る事を命じられ守りきり、心の交流と甦る剣さばきを確かめる機会がきっかけで、雪解けのように頑なな心に変化を生じさせ穏やかになってゆく様を描いた「野菊守り」。表題作は思いがけず現代小説。どことななく陰鬱さが漂うが、微細な心の動きを見事に描いた作風に感動。随想なども綴る言葉から人柄が伝わってきた。長く積んだままの作品だったけど、何とも味わい深い。
2022/01/31
AICHAN
図書館本。武家もの2編と現代もの1編(この現代ものが表題作品)とエッセイ。武家ものは相変わらずの安定感。現代ものは藤沢さんの作品としては初読みかも。どんなものかと少し危ぶんだが、これまた感心する出来栄え。江戸時代だろうが現代だろうが藤沢節は生きる。エッセイも面白かった。司馬さんとただ一度だけ会ったときのことなどを書いている。司馬さんの作品『ひとびとの跫音』のレビューは見事だった。
2018/07/22
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