新装版 暁のひかり (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-41)
新装版 暁のひかり (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-41) / 感想・レビュー
ミカママ
【海坂藩城下町 第5回読書の集い「冬」】現地時間ではあるが、寒梅忌の本日読み終えた。細君を若くして喪った周平っち、子育ててと仕事に忙殺され、鬱々とした日々を送られたそう。本作はおそらくそんな鬱をまだ引きずって書かれた作品なのだろう。主人公は一癖も二癖もある、ダメダメな男たち。脇を支えるのが、これがまた一筋縄ではいかない女性たち。『しぶとい連中』だけが明かりのさす内容で好き。『冬の潮』、中高年男性読者を意識した内容なのだろうが、嫁の立場で言えばこんな気持ちの悪い内容はない。オエ🤢
2020/01/26
ヴェネツィア
6つの短篇を収録。そのいずれもが、この世に生まれてきた宿命といったものをしみじみと感じさせる作品。それぞれの主人公自身にも、そしてまた周囲の者にも如何ともしがたい「業」に捉えられた人生の哀歓を、感情を抑制した文体で描き出してゆく。それは、時には読者の共感をさえ拒むほどである。そうした作品群の中にあって異彩を放つのが「しぶとい連中」。まるで安倍公房の戯曲「友達」の世界である。ただし、こちらは不条理劇ではなく、江戸の街に生きる庶民のしたたかさを軽妙なリアリティで描いてゆく。藤沢周平を堪能できる1冊。
2017/03/27
yoshida
藤沢周平さんの初期短篇集。江戸の市井もの。初期だけにほの暗さと哀切が余韻を残す。「暁のひかり」でのおことの儚さとラストの市蔵の絶望に、暁の光が眩いコントラストを描く。「しぶとい連中」で母子心中を救った熊蔵。なぜか熊蔵の家に居着く母子。母であるみさの心中を知り、家族四人で暮らす為に稼業に挑む熊蔵の姿が眩しい。「冬の潮」での市兵衛とおぬい。死んだ息子のおぬいが身を持ち崩すのを救おうとする市兵衛。しかしその原因は市兵衛の慾望だった。変わりゆくおぬいの姿に魔性をみる。読み終えて深い余韻を残す。心に染み入る短編集。
2017/11/26
じいじ
藤沢周平を読んでいると〈読書っていいなぁ。〉としみじみ感じる。本作は初期の短篇集。期待とおりの心地よさで読み終えた。田辺聖子が「藤沢小説の男たちがいい。読者をけっして裏切らない」と書いていたが、まさに本作の男たちもそれぞれキャラは違えど味がある。表題作は、壺振りの市蔵が主人公。強面に見えるが、根はやさしくシャイな男だ。可愛い娘に惚れる市蔵の純情さがいいね。【冬の潮】が好きだ。死んだ跡取り息子の嫁への思慕。自制するも夢の中で嫁への想いを果たす…、艶っぽい、大人の恋心の描写が秀逸。お薦めの時代小説です。
2016/09/01
タイ子
藤沢周平の作品は短編を読み終わるたび思わずため息がもれる。6篇の短編集。いずれも市井に生きる男と女の生き様を淫靡な雰囲気と、やるせない思いを感じさせてくれる。女の強さは男には勝てない。いくら好きになっても女は生きていくためにはするりと身をかわしながら女の性を売っていく。どれも幸せにはなれない物語が多いけど悲哀に満ちた人生模様にどっぷり浸らせてくれる。やはり藤沢周平はいい。
2022/02/13
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