新装版 闇の傀儡師 (カイライシ) (上) (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-48)
新装版 闇の傀儡師 (カイライシ) (上) (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-48) / 感想・レビュー
海猫
藤沢周平にしては珍しい派手な伝奇活劇。そして人物の造形や配置、文章の豊穣さしなやかさは逆に藤沢周平らしい。設定が大きいのに細部の地に足の着いた描写が絶妙。これによって全体に緊張感や焦燥感が漂う。敵の八嶽党ははっきり全貌を見せず、時に誰が敵やら味方やらわからなくなる展開は上質のサスペンススリラーのごとし。上巻はまだ抑え気味に思うが、現段階でたいへん面白いのでこの勢いのまま下巻へ。
2016/03/16
ケンイチミズバ
無限の境地、五感が冴えわたり鳥の声が消えた一瞬、落下する木の実を真っ二つにし師匠より下山を許された。流派の中でも野生の実戦的な剣を会得した源次郎と柳生最後の継承者かと思われる謎の男との対決は下巻に持ち越し。待ち伏せで毒矢を喰らったハンデを認め源次郎との対決を公平な状況で臨もうと立ち去った甚内はどうも悪人に思えない。訳アリ感が半端ない。重大な秘匿事項のため浪人である使いやすさ、幕政の裏に係わることに決めた源次郎だが、お鷹狩が中止となった時点で敵の待ち伏せを読めなかったのはやはり間諜としては素人ですね。
2021/12/20
じいじ
これは、昭和53年8月から1年にわたって、週刊「週刊文春」で連載された人気小説だったとのこと。五篇に綴られた物語、各編がとてもいい場面で転回してしまうのも、人気週刊誌への連載というのを、藤沢さんが意識していたのだろうか…?。150年の長きにわたって暗躍する徒党・八嶽党と幕府内の権力争いを側面から描く着想が、この物語を面白くしている。主人公が、剣の立つ素浪人というのも面白い設定だ。一息入れてから下巻へ―。
2022/11/12
nakanaka
後家人をやめた鶴見源次郎は筆耕を生業としていたが、偶然斬り合いに出くわし瀕死の公儀隠密からあるものを託されたことによりとんでもない抗争に巻き込まれていくという内容。筆耕稼業とはいうものの実は凄腕の剣客という設定は個人的に垂涎ものです。アクション多めでしょうか。源次郎と前妻との過去や、その妹との関係など大きな流れ以外の部分での魅力もあり面白過ぎます。上巻でこの面白さ…、下巻が楽しみです。
2022/10/10
優希
惹きこまれるように読みました。源次郎が御家人の身分を捨て、筆耕稼業に勢を出しているところから隠密業を託されるというのにグッときてしまいました。ひょんなことで出くわした斬り合い、瀕死の重傷を負った公儀隠密から密書を預かることが何かの陰謀に関わっているようで手に汗握りますね。幕府を恨み、将軍の代替わりを狙う悪党、老中の田沼意次との謀り事。最早先が気になって仕方ない展開です。御家人を棄てたはずの源次郎は隠密代行を成し遂げられるのか気になりますね。久々に武家ものの時代小説を読んだ気がします。
2014/09/15
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