新装版 風の果て (上) (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-55)
新装版 風の果て (上) (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-55) / 感想・レビュー
じいじ
【海坂藩城下町 第3回読書の集い「冬」】参加作品。 2018年の初読みは、大好きで安心して読める藤沢周平に決めていた。たくさんの候補の中から、悩んだ末に武家モノ『風の果て』を選んだ。「恥を知る気持ちが残っているなら五日後に…」との果たし状が、主人公・家老又左衛門に届くところから物語が始まる。静寂の中に虫の音が……藤沢さんの情景描写に心が研ぎ澄まされます。―感想は下巻にて…。
2018/01/04
ふじさん
片貝道場に通う部屋住みの若者の青春群像物語。首席家老・桑山又左衛門に、同門の友で今なお禄喰まぬ厄介叔父と呼ばれる市之亟から果たし状が届く。同門の5人の若者の運命が如何に。運とは?悲運とは?運命の非情さを巧みに描いた長編。後半の展開が楽しみだ。武家社会における次男、三男に生まれた人々の非情な現実が心に迫ってくる。希望と絶望が若者の心に交差する、閉塞感が漂う今の時代にも通ずる物があるような気がしてならない。
2022/02/24
さつき
首席家老桑山又左衛門のもとに届いた一通の果たし状。それは若い頃同じ道場に通った幼馴染、野瀬市之丞からでした。二人は共に小禄の武家の次男三男坊。婿の口がかからなければ、一生「厄介叔父」として冷や飯を食う境遇。不安定な時を共に過ごした二人の道が、どのように分かたれて行くのか、過去と現在を行きつ戻りつしながら話しは進みます。陰謀あり、斬り合いありで緊迫した場面で終わっていて、続きが気になります。
2019/01/24
佐々陽太朗(K.Tsubota)
百田尚樹氏の『影法師』の連想で読むことにした。上士と下士の間の厳しい身分制度、部屋住みの身の悲哀、婿養子に入ることでどうにか一人前として扱われ、己の才覚を発揮する場も与えられる。生きて行くにも恋愛をするにも壁だらけの中で、なんとかその壁を突き破ろうとする者、壁に阻まれたままの境遇の中で自分の生に意味を見いだそうとする者、様々な生き方と運命のいたずらが錯綜するなかで、若き頃、同じ道場に通った仲間がそれぞれの人生行路が決まってゆく。人は「生まれではなく、どう生きたかだ」と思いたい。下巻にすすむ。
2014/03/23
AICHAN
図書館本。桑山又左衛門はもとは下士身分の、それも次男だから部屋住みだった。剣術仲間も大概そうだった。しかし、婿に入った先が郡奉行だったため運が上がった。首席家老まで上り詰め、今では下士の部屋住み時代のような考え方はできなくなった。藩政を見るのである。政争で勝ち残るためには強権も必要だ。そんな又左衛門に果たし状を突きつけてきた男がいる。昔の剣術仲間で、婿にも行けず、厄介おじとしてくすぶっている男だった。又左衛門に対する妬みからか。政争の中で勝ち残ってきた胡散臭さからか。舌打ちし、やや怯える又左衛門。
2018/08/04
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