リオノーラの肖像 (文春文庫 コ 6-1)
リオノーラの肖像 (文春文庫 コ 6-1) / 感想・レビュー
のっち♬
70歳の母が娘に語る人生を費やして解き明かした自らの出生の謎。第一次大戦犠牲者を扱った重厚な大河ミステリーで語り手を次々加えて多層化し、長大なページに渡って推進力を維持している。著者のゴシックロマン志向を知っていれば望遠鏡が再登場した時点でオチの予想はつくのだが、そこへ至るどんでん返しの猛連打はもはや職人芸。反戦思想や階層社会への皮肉が痛烈で、善意が幾分報われているだけ『千尋の闇』より救いがある。それぞれの悲劇と時代背景を丁寧に結びつけているのでドラマとしても充実。稀代のストーリーテラーの正真正銘の傑作!
2022/09/20
遥かなる想い
読了後、余韻に快く浸れる小説はそうないが、本書はまさにそんな味わいを 楽しめる良質な本である。ゴダートの本はいずれも万華鏡のように入り組むプロットから、読者に素敵な過去の旅を用意してくれるが、「リオノーラ」という女性に焦点をあてながら、ミアンゲイトという館に立ち込める謎の霧を徐々に晴らしていく筆力は、天性のストーリーテラーの面目躍如。ミステリというよりも、リオノーラ一族の人間ドラマのような展開で、過去にさかのぼりながら、次第に明らかになる真実にはまっていってしまう。
2010/06/06
藤月はな(灯れ松明の火)
「倉橋由美子の偏愛文学館」で紹介されていたので興味を持ち、読みました。「ジェーン・エア」+「小公女」+「スリーピング・マーダー」=この作品というような印象です。家族の謎と執念深い義母に翻弄される女性が関係者と関わり、時を経て得た事実の物語。最後の4文が死と時が経つことの意味を象徴していて感慨深いです。
2012/09/08
ごへいもち
母娘が同名だったり嘘の告白があったり何度も登場人物表を確認した(´・ω・`)
2020/09/03
みみずく
リオノーラの両親、戦死した父ジョン、リオノーラを産んで死んでしまった母リオノーラ、彼らはどんな人だったのか。ミアンゲイト館で起こったと言われる殺人事件とは?それらの謎が少しずつひもとかれていく。この物語は戦争の引き起こした悲劇とも取れる。いろいろと変わり行く時代に、新興成金や美貌の人が「貴族」に食い込もうとする様子と「貴族」の矜恃で立ち向かおうする様子がなんとももどかしく辛かった。悪女オリヴィアにもう少し厚みがあれば長い物語ももう少し楽しめたかな…全体的に謎にもったいつけ過ぎかな?と思ってしまった。
2014/06/02
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