ビッグ・ノーウェア 下 (文春文庫 エ 4-5)
ビッグ・ノーウェア 下 (文春文庫 エ 4-5) / 感想・レビュー
W-G
やはり何度読んでも下巻は圧巻。ダニー/コンシディーン/ミークスそれぞれのパートで散りばめられていたピースが収斂していく快感と、その契機となるダニーとミークスの章のつなげ方が最高。ミステリーとしても、後の陰謀小説ともいえる作風に発展途中で、手掛かりの配置や意外な犯人の設定など、ツボをおさえてあり読みごたえが抜群。実は後半、コンシディーンの存在感がだいぶ薄れてしまうのが、好きなキャラだけに残念ではあるが、ミークスがどんどん良くなって補ってくれている。『ブラック・ダリア』同様、ラスト数ページの哀愁にやられる。
2023/08/06
まふ
読者の期待を次々に裏切って、残ったのは悪徳警官だけ。アンチヒーロー小説とでもいえようか。「どうだ、マイッタカ!」という作者のニヒルな笑いが聞こえて来そうだ。折角の保安官事務所+市警合同チームは全く機能せず、空中分解する。「よき警察官たれ」という理想主義など蹴散らして「警官も人間だ」という現実派だけが生き残る。おぞましい異常性欲者の肉食動物的犯罪も読む意欲を削がせる。この手の究極的犯罪とはいったいどういうものなのか。作者の緻密な事実積み上げ的叙述が一層この物語の真実性を高めたと言える。G1000。
2023/08/04
セウテス
下巻〔再読〕。「ブラックダリア」は、現実の事件の考察という側面から、日本画の様な潔さを感じて良く思う。本作は、設定や構成をとんでもなく計算し、何重にも作り込んだ油絵の様に感じる。又、作者自身が持つ暴力や狂気等の感性を、繊細かつ多重に作り込む事で、自分の納得の表現でも読者に受け入れられる接続点を見出だした様に感じる。3人が1つの結末に向かう際の、期待や苛立ち様々な感覚が重なり、多くの読者を巻き込むのだろう。よくハードボイルドからノアールへという言葉を聞くが、私はやはりハードボイルド止まりの方が合っている。
2019/04/21
扉のこちら側
2016年319冊め。169-2/G1000】三人称の描写で三人の視点で始まった物語は、上巻後半でそれぞれの糸が縒り合されてきた。一枚の極彩色の血塗られた錦絵が出来上がるのかと思いきやの「転」。この読者としてのマゾヒズム的歓喜にはお手上げだ。
2016/05/09
NAO
三人が持っている情報がすれ違ってしまうもどかしさは、事件に緊迫感を増していく。そして、だからこそ、あることを契機としてすべてがひとつに集約されていくとき、そのスピードは驚くばかりのものとなる。とはいえ、過去のこととはいっても、この暗さ、残忍さはなんとしたことだろう。それとも、過去のこととは言いきれないのだろうか。
2020/07/29
感想・レビューをもっと見る