ブラック・ダリア (文春文庫 エ 4-1)
ブラック・ダリア (文春文庫 エ 4-1) / 感想・レビュー
W-G
何度目かの再読。序盤は、妙に一文の区切りが長い、癖のある文体が読みづらさを感じさせるが、中盤以降、バッキーの軽妙さが表出してくるにつれて、ぐっと集中出来るようになる。何度か読まないとプロットを味わいつくせないほどの登場人物の多さと多面的な展開が、エルロイの、特にLA四部作の魅力だが、ブラック・ダリアに関していえば本筋の事件は割りとシンプルで、その分、些細な気づきから急展開するスリルも効果的に演出されている。とにかく物語の締めが最高に格好よく、ラスト6頁くらいのためだけに何度でも読める。
2023/07/25
遥かなる想い
スターの座に憧れた女性が転落していき、やがて惨殺死体となって発見される..というよくある事件設定だが、この物語りは1947年に実際に ロサンゼルスであった事件を脇において、むしろ事件に関連した人たちの暗い影を描いたもの。暗黒のLA時代の暗い雰囲気が伝わってくるよう。 (1991年このミス海外第3位)
2004/01/01
ケイ
LA4部作の一作目。話が二転三転しながら進んでいく。これで解決かと思っても、なかなかそうはさせない作者。第二次大戦終戦当時を描いているからか、差別用語や暴力を意識して用いているようだ。ブラックダリアの殺され方に既視感があると思ったら、ル・メートルのイレーヌ(アレックスの前作)で取り上げられていたように思う。登場人物達がみな脆く崩れていくのが見ていられないが、それでもなんとか踏みとどまる強さがある。このまま第二作へ。
2015/08/07
ゆいまある
馳星周の「不夜城」シリーズに影響を与え、ルメートルの「アレックス」シリーズに登場し、スパイダーマンファーフロムホームで取り上げられたノワール小説の金字塔。40年代のLAで実際にあったむごたらしい殺人事件を元に書かれた小説。圧倒的な暴力、殺人。飛び散る脳、ウジの塊、こびりついた血、腐敗した臓器と尿の匂い。たったひとりで生きる主人公。孤独な。親友も、妻も、手に入れたと思えば全て手からすり抜ける。ぜんぶ失っても手に入れたいものは何か。真実。切ないミステリー。すごく好き。きっとまた読み返す。リーに会うために。
2019/08/23
セウテス
暗黒のLA4部作第1弾〔再読〕ロスに夢を求めてやって来たエリザベスは、口を裂かれ胴体を半分に切断され、内臓が全て無い遺体で見つかる。実際に起こった事件を題材に、49年当時のLAの街を表現している。物語は主人公の刑事バッキーにより語られ事件に関わる事で、翻弄される人生を歩む事になる者たちの、悲哀と葛藤が描かれている。熱狂の後訪れる虚しさ、そして再び熱狂を求めてしまう愚かさ。人物や心理、凄惨なまでの情景を、作家エルロイは緻密なまでに描写する凄さが在る。しかしその根底には、弱者への優しい思いが満ちていて切ない。
2017/09/16
感想・レビューをもっと見る