裏表忠臣蔵 (文春文庫 こ 6-7)
裏表忠臣蔵 (文春文庫 こ 6-7) / 感想・レビュー
harass
忠臣蔵の小説からこの本を思い出した。図書館にあり借りる。忠臣蔵の実際の史実と後の創作の部分を意識しながら、架空の人物を織り交ぜて、刃傷事件から討ち入りまでを描く小説。不条理極まりない運命を辿る吉良上野介への同情を感じさせる。章ごとに有名小説名のもじってあり、「ビッグシティ、ブライトライツ」というのがあり、途中二人称語りになったりするという、遊びがある。久しぶりに読んだこの作家の才気にニンマリした。この作家の他作品ででてくるテーマである、世論という怪物への反感をさり気なく描くのは実に洒脱。なかなか楽しめた。
2017/12/26
高橋 (犬塚)裕道
星4。数少ない資料を基に(やや吉良寄りのようにも思えるが)中立的に「原因不明の刃傷沙汰を様々なカンチガイ、人それぞれの思惑によって<赤穂事件>をと言う天下を揺るがす大事件へと発展させてゆくプロセスを(文庫版後書きより)」シニカルに描いた物語。吉良出身の私としては少々溜飲が下がる思いもある。あの忠臣蔵の馬鹿騒ぎ以来吉良の人は異様な差別・蔑視に曝されてきたのだ。
2019/10/29
いぼいのしし
はやく丸く納めようとした裁決が裏目にでてしまった感じで、浅野家も吉良家も気の毒だ。
2014/02/27
ゆーいちろー
今でこそ、歴史裏話として吉良上野介の領地での善政ぶりなどが紹介されることもあるが、依然としてわたしたちが知っている「赤穂事件」は「忠臣蔵」であり続けている。本書は、わかりうる歴史的事実を元に、おそらく真実より半歩ほどずれた世界を描いている。無論そこには小林節ともいうべき諧謔の風味が漂い、より虚構の物語と見えるが、やはり半歩しかずれていないのだろうと思える。本書を読んで一番恐ろしいのは、浅野内匠頭の「乱心」の背景がまったく不明なことである。何だか現代の理由なき犯罪にも通じるように思えてならない。
2010/09/11
カンパネルラ
忠臣蔵を多くの資料を元に再構成している。一応フィクショナルな小説としての部分もあるが全体に信憑性の高い情報を元にしたものである。吉良の正義説は特別新しいものではないが、大衆の狂気のような視点はなかなか面白いと思った。
2007/09/19
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