海の挽歌 (文春文庫 あ 2-14)
海の挽歌 (文春文庫 あ 2-14) / 感想・レビュー
かんらんしゃ🎡
★阿刀田高はブラックユーモアやミステリー作家の感が強いが実は恋愛小説もいいと思っている。特に少しオクテな男の純情な恋を描いたら上手い。『怪談』『安土城幻記』などミステリーの中に芽生える男の恋心にはうん、分かると思わず言ってしまう。押すか引くか、なかなか難しいんだよね。★なんだけど、これは取材の紀行記臭さが鼻につき、つまりカルタゴに興味なければ退屈してしまう。氏はアラビアンナイトやギリシャ神話などにも造詣があり、その類を小説風に仕立てたもの。ミステリーもなく男女の駆け引きもなく途中で挫折した。
2017/10/03
KAZOO
この本はむかしのカルタゴ、現在のチュニジアあたりを舞台にした長編です。8章に分かれていてそれぞれ話が完結するような続くような連作の集まりのような感じです。チュニジアのいくつかの場所を昔の歴史を顧みながら案内してくれるような物語で私は好きです。フェニキア人の歴史をたどってみたいと思いました。
2015/04/10
エドワード
化学製品会社に勤める麦彦は、勤続休暇に別れた恋人明子の住むチュニジアへ旅し、彼女と八年ぶりに再会する。ここは古代にカルタゴが栄えた国。海洋民族フェニキア人が建てた、ギリシャ、トロイと並ぶ都市国家。死闘の末ローマに滅ぼされた国。もしハンニバルが勝利していたら…。歴史の流れは偶然か必然か。人の人生は偶然か運命か。麦彦は明子と別れなかった未来を思う。だが明子は言うのだ。「私と結婚していても、麦さんは遠い国で違う女の人と会っているわ。人生も歴史も、逆らえない意志があるのよ。」笑わずにいられない麦彦に共感する。
2014/09/16
MIKETOM
阿刀田得意のパターン。普通に書けば歴史蘊蓄ものなのだが、そこに小説的テイストを加味することにより一編の歴史ロマン小説になる。本書のテーマはカルタゴ&ハンニバルVS古代ローマ。もしもカルタゴが勝利していれば(十分に勝機はあった)歴史はどう転がっていっただろうか、という考察から一転男女の恋愛を持ち出して、もしあの時にああしていれば二人の仲はどうなっていただろう…という風に話が展開していく。でもま、これに限って言えば、歴史蘊蓄部分を楽しむだけにしていたほうがいいかな。そこだけなら面白い(恋愛部分もそこそこ)。
2020/06/07
ノイス
初阿刀田さん。半分著者のチュニジア&カルタゴの見聞録となりつつも、軽快な筆致で久闊を叙した男女を描く。寡聞にしてカルタゴのことは何も知らなかったのだが、ローマ神話については少し嗜んでいたので、エッセイ部分も楽しく読めた。今はカルタゴ考古学の研究も大分進んだのだろうか。阿刀田さんは短編の名手とのことだが、この作品で雰囲気が掴めたので読んでみたい。
2015/06/17
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