チャーム・スクール 上 (文春文庫 テ 6-5)
チャーム・スクール 上 (文春文庫 テ 6-5) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『チャーム・スクール』(花嫁学校?)などというタイトルからは想像もつかないのだが、モスクワを主な舞台に熾烈な米ソの諜報・謀略戦を描く。1988年の作品なので、ソ連邦解体以前。KGBの持つ超法規的なまでの権力には鳥肌が立つばかり。対するアメリカ側はCIAにペンタゴンに国務省とそれぞれの思惑を抱える複雑さ。モスクワの空気感やアメリカ大使館員(実は多数のスパイたち)の感じる逼塞感などきわめてリアルティの質は高い。これを読んでいると、ロシアには行きたくなくなること必定。そんなロシアに愛着と郷愁とを持つリサの存在⇒
2021/04/23
みも
ソ連崩壊前のモスクワ・KGB暗躍の冷戦時代。冷戦下に於いてはアメリカ大使館の敷地外に出た途端、外交特権を有する駐在員ですら行動制限される。アメリカ人旅行者の通報を端緒に、ベトナム戦争時のアメリカ人捕虜収容所を起源とする、途轍もない陰謀を暴いてゆく駐ソ空軍大佐と報道担当官の女性。恋愛を絡めつつ、CIAモスクワ支局長やKGBの大佐等、錯綜する人間関係を極少の登場人物で簡素化して描くスパイ小説。言い回しに分かり難い点はあるが、じりじりする諜報戦や暗喩の妙には痺れる。ル・カレや髙村薫が好きな方なら楽しめる。下巻へ
2021/04/12
Tetchy
タイトルの意味は「花嫁修業学校」。しかしこの穏やかなタイトルとは裏腹に内容は骨太の大傑作。ロシアという閉鎖的な大空間においてありとあらゆる人々の人生が錯綜し、壮大なる絵画を描く。冒頭の文体は牧歌的だが青年がやがて大使館にこの存在の一報を入れたその瞬間から物凄い緊張感を纏って進行する。しかし外出さえもがこれほど困難なロシアの中でしかもチャーム・スクールという難攻不落の要塞にどのように近づくのか、しかも主人公達はロシアから強制帰還を命じられて上巻が終わる。どうなるんだろう、このあと一体!?
2009/08/23
泰月
久々のネルソン・デミル。なかなか物語の核心までいかないけれど、冷戦時代のロシアの状況が見えて興味深い。コルホーズとソフホーズ、思い出したわ。
2020/06/28
コージ
タイトルを読んだとき、これは冷戦時代に本当にあったらしいソ連の女スパイの養成所、ハニートラップの学校のことだと思った。だがこの「チャーム・スクール」はもっと上‼、とんでもないKGBの施設のことだった。この事が表沙汰になったらアメリカもソ連も大打撃を受けることは間違いない。米ソ冷戦時代に外交手段だけで解決出来るとは思えないし、武力行使に訴えることも難しそうに思える。どんな結末を迎えることになるのか?。まさに国際謀略小説。緊張感を持って下巻へ。
2019/04/13
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